魔法

@mizuhoriann

第1話

いきなりだが、異世界転生ものである。

「あうあー」

言葉にならない言葉を発する。

時々当たる口の中の感触は、前世でいうところの犬歯に当たる部分であるのだが、なぜこうも感触がはっきりしているのだろうか・・

目の前の男女には、特別特徴らしきものは特にないのだが・・しいて言うなら、得意な耳と特別見える犬歯くらいだ。

「おーよしよし、どうしたー?トイレか~?どれどれー違うなー・・おなか減ったのかー?」

「さっき、あげたばかりよ。そんなにすぐにおなかが減るなんて食いしん坊なのかしら?だとしたら、あなたの遺伝よアレン」

「んな!?そうか!俺に似たのか!しょうがないしょうがない。デリダおっぱい出るか?」

「・・出ますけど?」

自我が、おぼろげだった時の記憶がよみがえったが、そのうち消える記憶だということは、知っている。幼児なんちゃらとかいうものだということは前世の記憶で知っている。知っているというと語弊だ。誤植だ。知ったかぶりだ。

知識はおぼろげだ。

前世というだけあって、なぜか徐々に記憶が消えかけている。今日で、俺の誕生日は10回目だ。毛並みもきれいな銀色だったのが、現世の父であるアレンの金色がにじみ出てきたせいか、今世の母であるアリダの銀色が浸食され、きれいなコントラストというか、融合というか、あせてしまったというかそういう微妙な銀色に収まっている。

耳も尻尾もセミロングの髪もつやつや・・

「ねーちゃ!だけ!イチゴ二つ!あーー」

「はいはい。アィミにあげるから、ほい」

「ははは!アィリンはほんとにおねぇちゃんになったな!」

「アレンが長男でアィリンが長女アィミが次女って感じかしらね」

「アリダがそういうめせんで俺のことを見ているから、いつまでたってもアィリンがパパと呼んでくれないんだ!初めに呼んだのがオトータンだったんだぞ!うれしかったけど悲しかったぁような複雑で溌溂な気分だったんだぞ!」

「きびきびしていた姿なんて、冒険者時代に一度か二度見たか見てないというくらいにおぼろげなものよ・・」

「あの~俺の誕生日・・なんですけど!」

「「あ」」

「でもね。アィリン私思うの・・そろそろ女の子らしくしてみない?」

「そうだな・・だけど、前も言ったと思うけど心は、男なんだ。もちろん羞恥心という面では、気にしないでくれ、白銀狼族と白金狼族の身体能力をフルに使いそのうえで秘儀を重ね掛けしても貞操は守るつもりでいる」

「まさか・・最近、一緒にお風呂に入ろうとしても気配がしていたはずなのに消えていることがあるのって・・」

「アレン・・まさかそれって、戦線離脱の折に、白金狼族の編み出した兵法「影法師」の現象ににてないっ・・!?」

「っそ、それだ!うむ、確かに、俺も使えるがそこまで練度が高いものではなかったから、わ、わからなかった・・」

一体、何の話をしているのやら・・瞬間的に、体内のへんな、力?気?みたいなものを手足に集めて、物陰を渡っているだけなんだがな・・

「そんなことより、ケーキ食べよう!」

「あむあむ、ンぐ、ねーちゃ!おかわっ!」

「はいはい、おかわり、ね。ほーら、アィミなんか一切れ食べたうえで、一つ余分に乗っかていた大きなイチゴも食べちゃったじゃん。」

その日、広い世界のあおい星の数ある小さな島の一つ、その中にある王国の端っこの小さな海の町の外れの村の一つの小屋で、俺、アィリン・サンドルギージェイピーは、10歳になったのだった。

「ねーちゃ!ちご!ちご!ない!」

「はいはい、ほいほいっと」

「「あー!私の(俺の)いちご!」」

「ねーちゃ!ちがとぅ!」

「母さんのも父さんのもぜーんぶアィミのものだからね~たーんとたべな」

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