病みたる柑橘類

安良巻祐介

 

 「病みたる柑橘類」という名前の雑誌を見かけて、興味が湧いたので立ち読みしようとしたが、ビニールでぴっちりと包装されていて表紙もめくれない。仕方がないので懐の銀貨二枚をはたいて買って開いてみたら、暗色を混ぜた黄や橙系の色の塊がめちゃくちゃに散らばされたページが延々と続くだけの本だった。現代アートというやつだろうか。さっぱり理解できない。こんなものが書店に堂々と入荷されて並んでいるのが不可解で、少なくないお金をそれに払ってしまったのが腹立たしかった。ぶつくさ言いながら帰宅し、冷蔵庫を開けると、野菜室に放り込んでいた蜜柑と柚子が全てぐずぐずに腐って真っ黒になっていた。

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病みたる柑橘類 安良巻祐介 @aramaki88

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