ポーンという親しみやすい猫のキャラクターを主人公とし、難しいテーマを斬新かつ易しく実は教えてくれている? そんな、初心者向け「小説の書き方」入門書のような内容です。
初心者の方がまずぶつかるのが、視点の壁だと思います。〝三人称(神視点)〟と〝一人称〟。これらを意識していなかったり、理解できていなければ、無意味にないまぜられて読者を混乱させるものにもなりかねません。
本作品は、なんと、それを「幽体離脱(第一話)」を使って分かりやすく書き分けるという、そのアイデアを思いつかれたこと、さらには、きちんとスムーズに描写されている力量に感嘆しました。
そして第二・三話では、密かに神視点で執筆する時のコツについて書かれています。自由間接話法というものですが、これは神視点で書こうとする初心者が陥りがちな注意点を、またも猫のポーンくんが苦悩しながら教えてくれていました。自由間接話法を書く時にも、神視点の場合は、冷静に常に第三者的立場で見なければならないと。
【「自由間接話法ってなんじゃ?」と思われた方】
もともと海外文学で主流で、私はこれを個人的には読み聞かせとか紙芝居をイメージし、「語り手がセリフを口にする感じ」として多用していますが、緊迫する戦闘シーンなどではグッとくる書き方なので、物語が魅力的に輝きだすとても素敵な話法です。辞書等でちょっと調べてみてから本作(猫自由間接話法~)を読まれるとさらに面白いですよ。 ※ 三話までのレビューになります。
小説の語り手は誰かーー?
主人公(ぼく・私)の視点で書かれていればもちろん主人公。登場人物がすべて三人称で記述されていれば、通例は神が語り部ということになる。
この不文律は、先人たちが積み上げてきた歴史の上に(見えはしないが)確かに存在しているのだ。
だからこそこの不文律を逆手に取ったクリスティの『アクロイド殺し』は、フェアかアンフェアかで何十年も議論の的となっている。
さて、本作はそんな不文律をメタ的に取り扱った作品となっている。
しかし勘違いして欲しくないのは、決して堅苦しい作品ではない。むしろフレンドリーな作品であるということだ。
主人公の猫のポーンが明らかにこの作品の語り部なのだが、彼は躍起になってこの作品を(猫)神視点で語ろうとしている。難しそうなテーマはあるが、そのあたりのユーモアで非常に上手くバランスの取れている作品なのだ。
さらにはメタい作品であるに留まらず、果敢にもパロディにも挑んでいる。
第3話のタイトル「猫神の声を聴け」は、村上◯樹の『風の歌を聴け』から付けられている。
これから本作の「語り手」が、どのように読み手をくすりとさせてくれるか。猫のポーンは猫神へなれるのか。心から本作の続きが楽しみだ。