第7話 真・目覚め

その後、洞窟のさらに奥へ進むと、道が二手に分かれていた。

「どっちに行こうか」

初めて入った洞窟だ、二手に分かれるのは危険だろう。

「私に任せて!」

ノエルはそう言うと、1歩前に出て、2手に別れた道に向けて両手を伸ばす。

「……」

「何してるんだ?」

「あれはノエルの神技のひとつ、『ヒアリング』だ。普通は聞こえないような小さな音を感じとってるんだよ」

「へぇー、すげぇ……」

俺が感心している間にノエルはヒアリングを終え、右の道を指さして「こっちが安全」と言っている。

「じゃあこっちだな」

ガリュがノエルが指さした方の道へ踏み込む、それに続いてレオたちも進んでいく。


洞窟を進んでいくと、大きな空間に出た。

人為的に掘られたような開けた空間だ。

「行き止まりか?」

周りの壁を探してみても、来た道以外に通路はない。

「なんなんだ?この空間」

何も無い広い空間が怪しく見えるが、探してみても何も無い。

「仕方ない、戻るか」

「安全ではあったけど、なんにもないんじゃなぁ」

「仕方ないでしょ!まだ使いこなせてないんだもん!」

3人がそんなことを言いながら、出口に向かった、その時だった。

背後でなにか大きなものが落ちたような音がしたのと同時に、地面が大きく揺れる。

「な、なんだ!?」

立っていることさえやっとの状態で後ろを振り返ると、そこには

「あれは……なんだ?」

人型の巨大な石像のようなものが、逆さ向きに地面に刺さっていた。

どうやら、天井に取り付けてあったらしい。

同じような形の窪みが天井にあるのが見える。

「崩れたら危ない、早いとこここから出た方がいいな」

ガリュの提案に全員が頷く。

4人は駆け足で出口から出る、ことが出来なかった。

「え……」

振り返った時には、出口は完全に塞がれていた。

「ギガボム!」

ノエルが神技で壁を破壊しようとしても傷一つつかない。

「くそっ!」

「とりゃっ!」

ガリュとゼノが武器で攻撃するも、これも傷一つつかない。

「なんで……」

「閉じ込められたってことか」

その場にいる全員がため息をついた。

「でも、食料は十分にあるし、水だって私の神技でなんとかなる!これ以上悪いことなんておきないはず……だ、わ……」

「どうした……って、え?」

ゼノが様子のおかしいノエルの目線を辿ってみると、その先には先程の石像がカタカタと動いている様子が見えた。

『プログラム、起動。命ジラレタ、侵入者ノ排除ヲ開始しマス』

機械のような声でそう聞こえたかと思うと、石像は生きているかのように立ち上がり、手足を生やした。

「な、なんじゃこれ!?」

ゼノは突然の出来事にパニック状態。

「侵入者って、私たちの事なのかな?」

『侵入者、排除』

石像は腕を振りかぶり、4人に向けて振り下ろす。

なんとか避けることは出来たが、あれはかなり強い一撃だ、当たれば一溜りもないだろう。

「私たちのことみたいね……いいわ、強いモンスターと戦いたいところだったのよ!」

ノエルはそう言うと、手に持っていた本を上に向かって投げ、1度点に掲げた手を、思いっきり地面に叩きつける。

「サドン・デス!」

すると、石像の足元の砂が渦を巻き始めた。

「土に呑まれて苦しみなさい!」

石像の体はどんどんと沈んでいく。

「勝てる……!」

そう思った矢先、石像はとんでもないジャンプ力で、砂から抜け出してしまう。

「くっ……あれは……」

まるでロケットのような噴射が、足の裏から行われているのが見えた。

石像は着地と同時にノエルの体をつかみ、壁に叩きつける。

「ぐはっ……!」

ノエルは地面に落ちると共に動かなくなった。

「ノエル!?」

「大丈夫だ、瀕死になっただけだ。でも、このままだと危ない…って、ぐあっ……!」

ガリュまでも石像に掴まれ、地面に叩きつけられる。

「み、みんな……」

残るはゼノとレオ、しかも戦えるのはゼノだけだ。

「くそっ……みんなを傷つけやがって!」

「ぜ、ゼノ!」

「神技、悪魔の刃!」

気づいた時には遅かった。

ゼノの振り下ろした剣は音を立てて折れた。

そして、地面に着く間もなく、石像の強烈なパンチによって、彼の体は吹き飛んだ。

「ゼノ……みんな……」

石像は最後に残ったレオにヘイトする。

「戦うことも出来ない俺に、生きる道なんて……」

『それは違う!』

諦めかけた時、どこからか声が聞こえた。

『あなたは戦えないんじゃない、戦い方をまだ知らないだけ!だから、今は生きるために、体を私に……!』

声の途中で石像がレオに向かってパンチを放つ。

(あれ、体が動かない……)

「私に、任せて!」

(え……)

俺の体は、先程まで聞こえていた声の主によって動かされていた。

「私の仲間を傷つけた罰、受けてもらうから!」

自分では体が動かせないのに、勝手に動いている、変な感覚だ。

「神の御言!」

声の主がそう唱えると、彼女、もといレオがもつ剣が黄金に輝く。

樹縛じゅばく!連続詠唱、闇の足音!」

すると、石像の足元から、木の根っこが飛び出し、石像に絡みつき、さらに石像の影から真っ黒な手が現れて、石像を地面に押さえつけ始めた。

『ウゴケ……ナイ……危険ナ反応ヲ検知、自己防衛ヲ展開スル』

「させないよ!展開・神世界しんせかい!」

世界が変わった。洞窟だったはずのこの場所が、いつの間にか雲の上になっている。

「塵と化して消えろ!火炎華龍かえんがりゅう!」

彼女が剣を振ると、剣の先から紅色の龍が現れ、石像に巻き付き、そのまま破壊してしまった。

石像が完全に動かなくなった後、レオは体から力が抜けて倒れてしまった。

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我が神の名のもとに プル・メープル @PURUMEPURU

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