第6話 君の下の名は?
僕の名前は寺野かずお、いたって普通の中学3年生の男子です。
今日は僕の中学校の卒業式です。
今はまだ卒業式の前で、教室にいるのですが、
なにやら中島さんの様子がおかしいのです。
中島さん『……寺野くん』
寺野くん『な、何?中島さん』
中島さん『名前教えて』
寺野くん『え?寺野ですけど…』
中島さん『ちがうよ!下の名前だよ!』
寺野くん『ああ、そりゃそうだよね、かずおだよ、寺野かずお』
中島さん『結構、普通だね…』
寺野くん『な、何だかスイマセン…』
中島さん『うらやましいよ!』
寺野くん『ど、どういうこと?』
中島さん『私の下の名前、知ってる?』
寺野くん『…そういえば、ずっと【中島さん】って言ってたからね、
ゴメン、中島さんの下の名前わかんないや、なんていう名前なの?』
中島さん『…言いたくない』
寺野くん『え?』
中島さん『今日は卒業式だから、卒業する生徒は一人ずつ名前を呼ばれるでしょ?
だからこれから私の名前が呼ばれると思うと、すっごい嫌なの!』
寺野くん『そ、そんな変な名前なの?』
中島さん『しかも卒業式って名前をマイクで呼ばれるでしょ?
何でマイクで言うの?私だけに聞こえるくらいの声で言ってくれれば
私の名前がみんなにバレないのに!』
寺野くん『そんなに嫌なんだ、でも僕は変な名前でも笑わないよ』
中島さん『……本当?』
寺野くん『うん』
中島さん『そうか、寺野くんが笑わないなら、別にいいかな』
寺野くん『え?あ、うん。人の名前を笑うのって失礼だと思うし…』
中島さん『…みくみ』
寺野くん『みくみ?』
中島さん『そう、【中島実久美】っていうの』
寺野くん『へぇ、珍しいとは思うけど、でも別に変な名前じゃないと思うけど』
中島さん『…みみみ』
寺野くん『みみみ?』
中島さん『【実久美】って書くと読み方を変えたら
【みみみ】みたいに読めるでしょ?
小学校の時にみんなから【みみみ】って呼ばれてて、
すごい嫌だった…』
寺野くん『…そうなんだ、
小学校の時はどんな理由であだ名が決まるか、わからないもんね、
でも【みみみ】っていう読み方の名前じゃないんでしょ?』
中島さん『うん、【みくみ】が本当の読み方だよ』
寺野くん『だったら卒業式では【みみみ】とは言われないし。大丈夫じゃない?』
中島さん『寺野くんは私の事【みみみ】って言わない?』
寺野くん『だって【みみみ】って言われるのが嫌なんでしょ?だったら言わないよ』
中島さん『…そうか、それならいいか』
寺野くん『……?良い名前だよ思うよ?
【実る・久しい・美しい】で【実久美】でしょ?
お父さんお母さんもすごく考えて付けた良い名前だと思うよ』
中島さん『……えへへ』
寺野くん『あ、あと【久美堂】っていう本屋さんもあるよね!』
中島さん『本屋に例えられるのは嫌‼』
寺野くん『あ、ゴ、ゴメンナサイ…』
中島さん『……フフ、卒業式なのに、いつも通りだね』
寺野くん『ああ、うん。そういえば今日で卒業なんだよね』
中島さん『寺野くんはいつも私の話を最後までちゃんと聞いてくれるよね!』
寺野くん『う、うん。頭痛くなる時あるけどね』
中島さん『寺野くんと離れたくないなぁ…』
寺野くん『え!そ、そうなんだ』
中島さん『まぁ高校に行っても同じクラスだろうし、よろしくね!』
寺野くん『う、うん。よろしく!』
…今日は中島さんと寺野くんが通う中学校の卒業式ですが、
この中学校は中高一貫校なので、二人は高校に行っても一緒です。
そして生徒数が少ないのでクラスは1クラスなのです。
つまり、寺野くんが中島さんの疑問に答える日々はまだまだ続きます…
中島さん『寺野くん!卒業式始まるよ!』
寺野くん『あ、うん!』
= ギモンだらけの中島さん おしまい =
ギモンだらけの中島さん 峰ひろ @cyupanon
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