第5話 のこぎり


中島さん『ほわーい‼じゃぱにーずピーポー‼』

 

寺野くん『……』



 

 

 

僕の名前は寺野かずお、中学3年生の男子です。

隣の席の中島さんは今日も全力投球です。



 

 

 

中島さん『ほわーい‼じゃっぱにぃーずピーポー‼』

 

寺野くん『…それ、外人のお笑い芸人さんのやつだよね?』

 

中島さん『そう!厚切りジェイソンっていう人!昨日テレビで見たの!』

 

寺野くん『そのテレビ番組、僕も見たよ、面白かったよね』

 

中島さん『一回も笑わなかったよ!』

 

寺野くん『え?面白かったから真似してたんじゃないの?』

 

中島さん『違うの!感心しちゃったの!

     私が考えてた事と同じネタがあったの!

     【銅】っていう漢字はなんで【金と同じ】って書くの?

     っていうネタ!』

 

寺野くん『確かに、ああいうネタはゲラゲラ笑いが起こるよりかは

     感心される事が多いネタなのかもしれないね、

     目の付け所が日本の人とは違うんだろうね』

 

中島さん『それでね!あ、ちょっと待ってね、』



 

 

 

中島さんがカバンから紙とペンを取り出して漢字を書き始めた。



 


 

中島さん『…これ!【鋸】ってなんて読むかわかる?』

 

寺野くん『え?金偏に居?あーわかんないや、この漢字なんて読むの?』

 

中島さん『のこぎり!』

 

寺野くん『へぇ~金偏に居る、って書いてのこぎりって読むんだ、』

 

中島さん『ほわーい‼じゃぱにーずピーポー‼ピーポー‼』

 

寺野くん『な、中島さん!声が大きいよ!教室のみんながこっち見てる…』

 

中島さん『でもおかしくない?金が居るって書いて【のこぎり】って、

     それでね、納得いかなかったから

     【鋸】っていう漢字の由来を昨日調べてみたの!』

 

寺野くん『(…気になったら止まらない性格なんだろうなぁ)』

 

中島さん『漢字の由来って人とか物の絵を崩して字にしたものでしょ?

     それで【鋸】っていう漢字は

     【固いかぶとに腰掛ける人】の絵を漢字にしたもので、

     それで【のこぎり】って読むんだって!』

 

寺野くん『ふ~ん、何かよくわかんないね?』

 

中島さん『ほわーい‼じゃぱにーず…!』

 

寺野くん『ストップ!中島さん!それやめて‼』

 

中島さん『えー、でもおかしくない?【固いかぶとに腰掛ける人】で

     【のこぎり】っていう漢字を作りたいんだったら、

     そのまんま【固兜腰掛人】って書いて

     【のこぎり】って読むようにすればいいのに!』

 

寺野くん『ま、まぁ理屈はわからなくもないけど、

     でもそれだと長いよね?

     文字数が元の【のこぎり】よりも長くなっちゃうよ!』

 

中島さん『うむむ…』

 

寺野くん『それに漢字の由来が意味不明だから中島さんは納得いかないんでしょ?

     だったら意味がわかるものにすればいいんじゃない?

     例えば、のこぎりは鉄に歯が付いてるから

     金偏に歯をつけて【のこぎり】って読むようにするとか…』

 

中島さん『それは金歯だよね』

 

寺野くん『そ、そうなるか…じゃあ【鉄歯】この2文字の漢字で【のこぎり】は?』

 

中島さん『鉄の歯って言われると、トラバサミみたいな【罠】を連想するかも…』

 

寺野くん『うーん、難しいなぁ、昔、漢字を考えた人も悩んだんだろうなぁ』

 

中島さん『のこぎり…ノコギリ…うーん、』

 

寺野くん『そもそも何で【のこぎり】が気になったの?』

 

中島さん『昨日、のこぎりで木を切ってたの』

 

寺野くん『な、何で?何でそんな状況になるの?』

 

中島さん『もうすぐクリスマスでしょ?庭に生えてるモミの木を切ってたの!』

 

寺野くん『そ、そういうのは男の人に頼んだりしないの?』

 

中島さん『自分でモミの木を用意したかったんだよ!

     それでモミの木を切ってる時に、のこぎりの持つ部分を見てみたら

     漢字で【鋸】って書いてあったの!』

 

寺野くん『それで鋸の漢字が気になっちゃったんだね、

     それで庭のモミの木は切れたの?』

 

中島さん『まだ切れてないよ、クリスマスまでには切り倒したいな!』

 

寺野くん『切り倒す?そ、そのモミの木はどのくらいの大きさなの?』

 

中島さん『たぶん10メートルくらい』

 

寺野くん『え?そんなデカいモミの木を切ろうとしてたの?』

 

中島さん『うん!私の部屋に飾りたいの!』

 

寺野くん『そんな大きいモミの木をどうやって家の中に入れるの?』

 

中島さん『……‼』

 

寺野くん『も、もしかして無計画?』

 

中島さん『……寺野くん』

 

寺野くん『な、なんですか?』

 

中島さん『クリスマス、暇?』

 

寺野くん『え?う、うん暇だよ!何の予定も無いよ!』

 

中島さん『えへへ、ウチでクリスマスパーティしようね!』

 

 

 

 

 

なんだかゴマかされた気もしたのだが、

僕は中島さんとクリスマスを過ごすことになりましたとさ。

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