花火呑み

安良巻祐介

 

 そいつは夏の暮れ、人の捨てて行った線香花火の滓を拾い集め、その中にごくごく僅か消え残った思い思いの火を呑んで、両の目玉を七色の幻燈に染めて、酔うている。

 時折、誤ってねずみ花火を口に入れ、目をちかちかとさせながら跳ねまわったりもする。

 口直しに、その辺の家の仏壇からただの線香を盗んできて、空を眺めつつボンヤリ咥えていたりもする。

 一通りの空腹を満たしたら、天狗蓑のような姿の隠し方で地べたを忍んで行き、まだやっている最中の打ち上げ花火の筒の中に、フイと跳び込んでしまう。

 そうして、最後は一緒に打ち上げられて、夜空に咲いた大輪の鮮やかな花に、地べたへ落ちて行った線香花火たちの、小さく焦がれた流星の色を、ほんの少し足して消えるのである。

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花火呑み 安良巻祐介 @aramaki88

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