遠い他府県で育った私からすると教科書で習っただけの存在が、老婆の方言で語られると、非常に生々しく、真に迫ってきます。老婆の語る歴史は、さらに別の老女から語り聞いたもののようであり、それはすでに伝承であるとも言えます。しかし、「知り合いの知り合い」が体験したことであり、また教科書には書かれていない略奪も語られます。島の住民にしか知り得ないことです。願わくはこの物語がこの島に語り継がれんことを。
椿の意味するところは、実にはかないものだというイメージがある。首が斬られるように花が花弁ごと落ちること、『はかない』が無縁に打ち捨て葬られるさまを匂わす詩もある。わんさと実るその椿。見ていたのか、はたまた、そのために残されていたのか。ううむ。