第4話
木本彩夏が行方不明になって3日経ったが、目撃情報といった手掛かりは何もなく、警察は学校やら彼女の家やらを行き来していた。
もちろん自分のところにも警察はやってきた。なにせ彼女が行方不明となる前、最後に会ったであろう人物は他でもない。自分なのだから。
「また何か思い出したら知らせて下さい」
何回目かの事情聴取、伝えることはいつも同じなのに警察は毎日自分の元に来て話を聞く。
もちろんあることは除いては何も隠すことのない自分は正直に話すも、警察は自分の言葉に嘘がないかを確認してくる。
ふと奥から歩いてくる人物に目が留まる。無精ひげにぼさぼさの髪。一言で表すと『汚い』
「事情聴取お疲れさん、大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ」
刑事で自分の今の育ての親。
神矢淳造(かみやじゅんぞう)、自分の事は疑うことはないが、勘が鋭く嘘をつきにくい存在ではあった。
今もこうして自分の所に来たということは、何かに気づき聴きにきたのだろう。
「お前さ、何か隠してるだろ?他の奴じゃ信用できないのは分かるが、俺には言えるよな?」
まだこちらがイエスとも言ってないのに隠していることを決めつけ吐けと言う。
「強引な男は嫌われるぞ」
「ははは、ずっと一人でいるからいいんだよ。で、何を隠してるのかな?」
誤魔化しは通用しない。同じ神矢家の人間ならよく理解できた。
自分は先ほどの警察官には話していないことを淳造だけに伝えた。
「彼女が消えた日に、殺してくれと頼まれた。理由を聞けば彼氏に浮気されたからと言っていたがあれは嘘だ。本当のことは隠された。でも」
「おい、待て。お前まさか了承してないよな?」
話を遮り淳造は自分の肩に手を置き逃がさないよう固定してきた。
淳造の手は傷跡だらけでごつごつと男らしい手をして嫌いではなかった。でも触れられることは嫌いな自分は手を払いのけ壁に背を預けた。
「了承?したよ。こちらからではない、向こうからお願いされたら話は別だろ?」
そう言えば淳造は深いため息をついた。
「なんでそう・・・・殺しはダメだって話したよな?いくら俺たち一族の血が流れているとはいえ、あれは大昔の話だ。今は関係ない。だから」
「もういいか?その話は聞き飽きた」
「おいっ!」
説教はこりごりだ。淳造の言いたいことは分かる。でも自分の中にいるもう一人の自分自身は納得してはくれない。誰よりも濃く受け継いでしまった殺人鬼の血。否定することは出来ない。でもまだ人を殺したことはない。自分の中で何かがストッパーをかけ、ギリギリの所で思い留まらせてくれる。
壊物 あきよし @awamu
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