概念召喚ファンタジー茨城

 カシマは光子ダガーやフェイズガンなどなど、お決まりの近距離武器を使っているようだ。レーダーやセンサーを生成し、罠を感知したら淡々と撃破する。


 ダイゴは通路に配置されている砲台を破壊し続けるが、拘りがあるのか毎回違う遠距離武器をその都度生成しているようだ。ど真面目な奴だからなぁ、場面にあった武器を選びたいんだろう。


 そんなダイゴは今、厳重に隔離されている金属扉を開けようと四苦八苦している。


「私にはお手上げです。ネットワークに繋がっていませんし、反響フィールドによってフェイズライフルは通じません、ヒタチ、鉾で変換してください」


「あ、その手があったか。よっしゃ!いっちょ変わってくれ」


「Y」


 鉾を使ってドアの物質を変換すれば良いのか。なんて便利なんだ。便利な道具でも持ち主がアホだと宝の持ち腐れになるね。仕方ないね。


 気を取り直して豆腐にでもしてやるか! 装甲なんて無意味なのだよ!フハハハハ!


「はいそこまで。よくもまぁこんな所まで来てくれたわね」


「なっ!? 」


 突如、円形陣を組んで周囲を警戒していた俺達の中心に、黄色いスーツの女性が姿を現した。


 手に持っているワンドを片手でクルクルと回し、全員が吹き飛ばされる。


「バカな!一体どこから……」


 ペイグマリオンが嘆くのも無理は無い。

 AI二人の索敵も、シャリエさんの感知にも引っかからなかったのだ。


「あらあら、こんな雑魚に手こずって私達を起こしたの?面倒だわ〜。特にあんた、動かないでね? 」


「なっなんだ!?動けいてててててってぇっ!」


 まずいぞ、これはまずい。

「守」を維持しつつ鉾で突撃するが、突然足元から何かに掴まれたような感覚がした後、空中にぶら下げられたのだ。しかもなんだこれは……これは……熱?火?燃えてる?俺燃やされてる!?


 アッチィィイいいい……くない?

 ああ、スーツの通常フィールドが働いているのか……知られてなくてセーフだが、動けない事には変わりない、なによりこの炎、少しずつだけどフィールドを侵食してる。火力がおかしいぞこれ!


「はいひとつ。あれ?死なない? まぁ放っておけば燃え尽きるでしょ!」


「だんな様!今助け…………いけないっ!シャリエさん!」


「キャァァアアア!?」


 まるで雷が落ちたような音と共に、眩しく光が迸る。


 これは電気? シャリエさんが感電したのか?


 シャリエさんもイバライト製の防御フィールドが発生しているはずだが、彼女は動かない、クソが!動けっ!動けぇぇ!


「マドモアゼル!私の後ろへ!早く!はや……なんだ……なん……」


 突如大量の水が発生し、ペイグマリオンが空中で水没する。


 アイツは俺の類似品か!?


「こんな人知りませんよ!もしかしたら特Sクラスのっ!あっ!離しなさい!」


「つっかまえた、久しぶりだもの、遊んであげるわ!」


 エリナの斬撃を、空間が歪んだかのようなフィールドで受け止めそのまま固定、カシマがそれを引き抜こうともがいている。


 マズイマズイマズイぞ!まさか全滅…………不意打ちとはいえ、こうも簡単に?


 《ちょっとヒタチ君!?もしかして全員やられてない!?ちょっちょっヤバイヤバイ!ちょっと君行ってきてくれない? え?質問の途中? それどころじゃ、え?出られない? 確かに!ヒタチ君居ないと君たち出られないじゃん!私も外行けないし!アワワワワワ!》


 ああ、あるよね、ヤバくてパニクってる時、更にパニクってる奴を見て冷静になる感じ、あるある……。


 しかしなんだこの能力は?

 見えない力場、炎、水、雷? おい、ファンタジーの魔法使いじゃねぇんだぞおい。人の事言えんが。


 黄色女は物珍しそうに水中のペイグマリオンを覗き込んでいる。

 それにしてもペイグマリオン、普通なら窒息してもおかしくないのに割と余裕そうだ。カシマに向かって指で指示を出している。


 ダイゴは最初のインパクトで機能停止している。

 俺の腕輪とリンクしている為、AIが機能しているのはわかっているとはいえ、動かない友人を見るのは辛い。


 対策を考えろ、対策を。

 龍ケ崎の力!ダメだ水龍が空中で止まった!

 守谷! 意味ねぇ!

 鉾田! もう出てるけど動けない!

 明野!開けねぇ!

 真壁!抜けられ……動けない!


 まずい、能力が役に立たない。

 何か拘束を解けるものがないか、なにか都合の良いものがないか?

 便利な奴便利な奴


 あーっ!

 そもそも身体が燃えていて集中出来ないが、何とか考えなければ。そうだ!牛久の力!大仏様だ!せいっ!


 《非常に申し訳ありませんが、まだこの世界で実体化出来ないのですよ。オムニのデカい塊がありますね、この近くに》


 えぇ……そういや大仏さん話せたんだ……しかもご丁寧に手に不可って書いてるし……無理なのか……ん?手の文字が無理になった?


 《それはですね、文字はヒタチさんの発想で表示されているので、自由に変えられますよ。あ、それどころでは無いですよね》


 そうなのか…………ど、どうもありがとう?


 《どういたしまして。それと概念召喚を試して見ては?茨城の土地に関連するものなら、概念を利用できますよ。では〜》


 ありがとうございました。うん、これもしかして大仏様の思考だけ召喚したんだね。そうなのね、意味わかんないが。


 まぁいいや!言われた事を試そうか!


 茨城といえば、水戸納豆!


 そう考えた矢先、腕には概念召喚の文字が。

 そして、黄色女に向かい何かが降って落ちる。


 黄色女は何が起きたのかも分からず、凄くその……うわぁあれ納豆だよ……頭からいったのかゴメンなさい――――いや違う!成功はしてる!


「アンタらよくも!…………あれ? 誰も動いてない?アレ?っていうか何コレ…………このネバネバ……変な匂い……うへぇ!消えろ!」


 あっ消えた、でも出るには出たな。


 ――――でもなんか違う……!


 次!


 ガマの油!


 うん、やはり黄色女の真上からオレンジ色の油が垂れてくる。


 アーユルヴェーダか何か?


 まずい、黄色女がフルフルと震えている!


 あれ?なんか気持ちよさそうだぞ?マジで体力回復してんじゃねぇのあれ?


 ――――次!


 うん、メロンだ。メロンが落ちてきた。

 まさかの空中キャッチだよ!


「これもしかして、メロン? メロンだ!やったああ! え? でもなんで? もしかして私の能力暴走してる? 」


 うん、そうだね、メロンだね。しかもイバラキングじゃないか。美味しいよそれ。


 知ってた?茨城県ってメロンの連続生産量日本一なんだぜ? 北海道だと思ってたでしょ? 独り言だけどね?


 ――――役に立つのはないのか!次!


 オセロ?オセロだ。わぁ、黄色女頭捻らせてるよ。分かるよ、俺だってそうだよ、なんでボードゲームが出たんだよ。


 ああ知ってるよオセロって水戸生まれだもんな。1945年だっけ?名前はシェイクスピアのオセロから取ったんだよね。


 でもいるか? 今か? 能力がここまで無能だったの初めてじゃないか? そろそろ余裕ないよ? あいつキレそうだもん。


 ――――次!


 アンコウが落ちてきた。

 アンコウは深海魚なのに、空から落ちてきた。


「なにこれ……」


 なんだろうね!


 ――――つ、次ぃ! いや待て、まだだ、作戦を立てよう。


 周りを見てみろ、ペイグマリオンはまだ大丈夫だ、若干諦めてカシマ人形で遊んでいる、うん、ヤバそうだ。


 次にダイゴ、脚が吹っ飛んでるけどコアは無傷だ。


 カシマは空中でじたばたもがいてるな……、でもあのフロート感、なんだか反重力デバイス思い出すな、もしかして、この縛られてる見えない力も重力なのか?


 次はシャリエさん、あぁなんか痙攣してるけど、ヤバかったらアムトリスから緊急アラートが来るはずだ、明らかにヤバそうだけど


「動けない! 離しなさい! 」


「え? 私剣しか固定してないわよ? かかってくるの待っているのだけど、なんかさっきから色々降ってくるし、あの来るなら早くきてよ! 」


「え? あ、ほんとだ」


 そしてエリナ、うん、音響剣ストレプトカーパスを必死に引き抜こうとしてたね、俺も薄々動けんじゃわないかなぁと思ってたよ?


 もしかして彼女、ちょっとアホなのでは……いや、今は考えまい!


 さて、遊ばれてるエリナはさておき、この重力っぽいのを解除した後はどうするか。まずこいつを解除できるならカシマも解放できる。


 次にペイグマリオンの周りの水は龍ケ崎で推し流して吸収する。


 その流れで、敵にぶち当てる、これで行こう!


 ――――コイツだ!


 黄色女の真上から、突如巨大な影が差し始める。明らかに巨大なものが降ってくる。


 そう、大洗水族館が誇る世界一位の飼育数、海のハンター、サメ!


 が、しかし、ここは陸地。

 残念ながら竜巻も無い、あの映画好きなのよね俺、あ、後で洗脳解けた後アネモネさんにやってもらおうかな、いやヤバいからやめて行こう。


 黄色女困ってるよ! というか怖がってるよ!

 あ〜ヤバい手を出しちゃダメだって! うん?いいのか? いや、危ないってサメ知らないのか?


 あ、消し炭にした。

 噛まれそうになったもんね、仕方ないね。

 サメさんゴメンなさい、召喚したのは生き物なのかわからんけど。


「今のは怖かったわ!私も馬鹿じゃないの、いい加減にしなさい! 私をなめてるの!? いいでしょう全員殺してあげる! 」


 うん、大失敗!

 うむ、ここは仕方が無い、多分あれも出せるだろう。土浦武器学校で見た事あるし? 威力はフェイズライフルより弱いけど、押しつぶせる!


 ――――喰らえ!10式戦車!


 先程のサメよりも遥かに重い物体が天井から堕ちてくる。複合装甲の塊、長い砲身を持ち、あらゆる悪路を突き進む、陸上戦の王者。


 が、しかし、流石にやばいと思ったのか、圧縮されてビー玉サイズにされてしまった。


 やっぱり重力だあれ!


 ああヤバいぞ、今あんなの向けられたら殺される!


 覚悟を決めるか、こうなる可能性だってあったんだ。


 いや待て、茨城といえばあれがあったな、でも今までと規模が段違い、出来るのか?


 ――――どうだ? やっぱ無理か?


 その瞬間、コントローラーズ本部ビルを襲ったもの、あらゆる物を破壊し、人々を苦しめ、恐怖を呼び覚ます最悪の、そして自然の大エネルギー。


 地震だ、地震を引き起こしたのだが…………


「地震ね、震度2くらいかな? 」


 そっかぁ、ここも一応日本だもんね、珍しくもないか、しかも震度2って。


 いや地震を起こせる時点でヤバい、多分オムニフラグメントを潰していけば威力が上がるんだろうけど…………


 使う機会ないかもなぁ


 燃やされながら冷や汗というのも不思議な気分だが、このままでは死ぬ事になる。


 神様助けて!


 《頑張ってね☆》


 ちくしょう!

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異世界よ、茨城の力を知るがいい 〜神の力を手に入れた俺の能力は、茨城の概念だった!? 〜 アステリズム @asterism0222

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