曇り空のラブソング・終わりの終わり

君との思い出なんて、そんなに多くはない。

たった半年の思い出なんだから。

でも、たった半年だったからこそ、ボクは君をあんなにも愛おしく感じたんだと思う。

君がいることが当たり前になる前にお別れが来てしまったから。


「少しの間、居候させてやるだけの関係。それ以上でもそれ以下でもない、か」


少年は空を見上げて笑った。

空からは、彼の心を映し出すかのように雨が降り始めた。


少年は1人、家に帰った。

久しぶりの誰もいない我が家はとても寂しく感じた。

部屋の電気をつけ、1人でテレビを見る。


ピンポーン

突然、インターホンが鳴った。

「はーい」

暗い返事をして玄関を開く。

「えっ、なんで……」

そこには10歳程の少女が――――沙耶が立っていた。

「えへへ、家出してきちゃいました」

「だ、大丈夫なのか……?」

「記憶喪失前の私は虐待の証拠を持っていたみたいで……それをチラつかせて逃げてきました!」

沙耶、可愛らしい見た目でやってる事がゲスい。

「私、帰ることに怯えないって言いましたよね?」

ボクは頷く。

「私の『帰る』場所はここです!」

彼女はボクに飛びついて言った。

「また居候、させてくれますか?」

ボクは嬉しくて、沙耶をぎゅっと抱きしめた。

「もちろんだ!」


こうしてボクらの『しばらくの間、居候させるだけの関係』が再開したのだった。


〜完〜

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曇り空のラブソング プル・メープル @PURUMEPURU

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