独特の感性で書かれる、素晴らしく読み応えのある、ざわつかせるエッセイ

『あのころは近所のサイゼリアで「犬はなぜ自殺をしないのか」ということを昼から夜まで延々と話し合っていた』これはエッセイの一節の冒頭である。なんともドキドキさせるような書き出しである。この一文だけでエッセイとして価値のあるものだと確信を得ている。犬怪寅日子さんの文章は鋭利に尖ったナイフに思わせながら、それでいて、悲しくなるような繊細なのだ。文章というか作品に向き合っている人しか書けないエッセイだ。ざわつかせるのだ。心を。上からでもなく下からでもなく、真正面から受け止めたい心情の吐露が、なんとも言えない感動を覚える。犬怪寅日子さんの酔ってしまうようなぐるぐる渦巻くようなエッセイを是非読んでいただきたい。そして犬怪寅日子さんの妖しい魅力を感じてほしい

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