君と私と

第1話

私は私でしかなくて、君も君でしかない。どうにかしても、他にはなれない。


少し、私の話をしたいと思う。私は良く変わっていると言われる。皆が好きなものに興味は無く、皆が見もしないものに興味を示す傾向にある。所謂マイノリティ、そう、少数派だ。性の対象もそうだ。女だとか男だとか気にしない。好きになった者が偶々異性や同性であるだけで異性じゃなければいけないと思った事は無い。此れは最近妹に私はバイセクシャルだよねと何気無く言われ初めて気付いた。そして考えてみたのだが何も人でなくても好きなものは好きだ。特に猫の形をしたものに愛を感じる。なら、其の愛は果たして同種族である人間と何が違うのだろうか。矢張意思の疎通だろうか。そう考えると言葉とはなんと便利なツールなのだろう。けれど私は言葉はあまり好きではない。言葉一つで傷付き悩み苦痛に陥り潰される、何より強い武器だから。しかし其の言葉で救える命もある。難しいものだ。そして何より私を知る為には知らなければいけない情報がある。そう、私は所謂精神障害者だ。双極性障害、軽度精神遅滞、ややこしい病名が付いている。そして私を蝕むもう一つ厄介な病気が皆も知っている依存だ。皆が軽く言う依存とは違う、其れが無いと吐き気がし手先の痺れに眩暈、立っていられなくなる。そう、私は君という存在に依存しているのだ。君が居ないだけで私は途端に喋る事さえ億劫になる。周りの言葉がいまいち理解出来なく結果排除する。君以外の言葉はどうでもいいんだ。君が居れば其れだけでうきうきする。喋りたくて、けれど言葉は喉の更に奥に引っ掛かりひらがなの羅列が胸で泳ぐみたいに何も言えなくて、ただ君を呼ぶだけになる。だから、喋れないのならばせめて其の身体に触れていたいと思う。良く言う頭のてっぺんから足の指先まで余す事なく君に触れたくて、けれど嫌がる君に私のもやもやとした愛とも呼べる何かが此の身体に積もるんだ。君を愛せば愛する程私は周りから変人扱いだ。結婚という此の国にある制度で君を縛り付けたい。けれど其の制度が私と君を邪魔するのも事実だ。そもそも愛する事に名前を付ける事が疑問でしょうがない。本当に愛しているのならば其処に名前は必要なのだろうか。良く遠距離で駄目になったというが離れた位で消える愛ならば其れは幻だったのではないのだろうか。私も一時君と離れた。だが君を忘れた日は一日もなかったし毎日君の幸せを願っていた。側に居た時よりも愛情が増した。其れは、おかしい事なのだろうか。私は良く人に疑問を投げるが答えを貰える事はあまり無い。皆、何故か濁そうとする。私は其れがあまり好きではない。白か黒か、表か裏か知りたいと思うのは普通ではないのだろうか。好きか嫌いか、私は其の二つしかない。だから一度好きになったらずっと好きだし一度嫌いになったら一生嫌いだ。そのせいで一度愛してしまったら一生愛してしまうのだ。そして産まれて初めて愛した君をもう十数年愛し続けている。嫌な所なんて無くて愛は日に日に大きくなるだけで、愛は更に増やしたら何になるのかが今の疑問だ。だから、嫉妬だってする。君が他の話をすれば耳を塞ぎたくなる。君が他を楽しそうに語れば語る程私の心はがりがりと削がれていく。私だけを考えて欲しい、私の事だけ見ていればいい。其の言葉を薬と一緒に飲み干す。私は、おかしいのかもしれない。しかし其れを認める事は出来ない。だって、認めてしまったら君はおかしな奴に好かれた可哀想な子になってしまう。だから私は必死に普通を演じる。笑顔に哀しみを隠し言葉に無感情を消し、そうやって日々心を抉り削り苦しみを飲み込み狂っていく。普通が私を殺す。私を枠に納め除外する。右の向けない私は只泣くことしか出来ない子供だ。けれど君だけは違う。私を理解し枠から引き摺り出してくれる。私を、普通にしてくれる。私は、君を愛している。逸そ獣の様に無駄な駆け引きなぞせず思いのままに君を求めたい。君を手に入れた其の先が知りたい。永遠が本当に存在するのか、私は見たいんだ。流行りの歌みたいな薄っぺらい愛なんて知らない、君が世界なんだ。君の居ない世界なんていらない。私は、そんな世界には存在したくもない。其れが君という存在なんだ。抱き締めて欲しい、唇を重ねたい、其の身体に触れたい、三大欲求の一つを君で満たしたいんだ。朝何度も見る占いよりも君の一声には敵わないよ。君は、君が、君さえ居れば、私はその日を生きられる。君と未来を作りたいんだ。しかし、今私と君を括るのは違う形であり其れは私の望むものではない。人間が勝手に決めた法律やら規則やら当たり前が私と君を歪な形にしている。私は其れが分からない、理解出来ないんだ。何故君を強く深く愛する事が罪深き事なのか、皆がおかしいと言うのか。私からみたら周りは当たり前を振りかざした怪物だらけだ。同じ言葉を話している筈なのに全く理解が出来ない。君の言葉しか、理解出来ないんだ。同じだけの愛が欲しい。愛して欲しい、愛されたい、只、抱き締めて欲しい。それだけを願っている私は欲張りなのかもしれない。


そんな君は、私のたった一人の娘だ。

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君と私と @hacchinosumika

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