永遠に
生んでくれてありがとう。バイバイ、生みの親たち!
「──確かに、貴方は私の先生に似ている部分があるわね。・・・不思議な気持ち」
ドーム状の小屋に案内された私たち。外は夜も更けている。
私、アミメキリンは夜目の利かない動物。センとオルマーは夜行性だからかすでに分かったようだけど、私は明りの下やっと依頼主の姿を確認できた。
後で聞いたんだけど彼女、先生と近縁種らしいわね。ふふ♪
青と黄色の目──先生は確か左右反対だったけど──、イヌ科。それに伴う鋭いいで立ち。赤いバンドを身体に、体毛色は薄い灰色で・・・。
依頼主の・・・名前を聞きましょうか。
「初めまして、私を知っているようですが改めて自己紹介させてください。自分オオセンザンコウのセンで、こちらはパートナーの──」
「オオアルマジロのアル・・・オルマーだよ!きみだね、海の向こうから私たちに助けを求めたのは!」
「アミメキリンというわ。臨時の付き人みたいなもので今回は一緒させてもらう。私も普段探偵をしているのよ」
私たちが自己紹介を終え、依頼主は静かに口を開く。
「わたしは・・・イエイヌです!依頼を聞いてほしく、探偵として動いている
ん? あっ、しまった!! 私としたことが・・・
なんのフレンズか推理を忘れてたわ!うっかりさん!!
動揺している私をよそに、センは続ける。
「おや・・・?キリンはともかくとして、私は探偵というより何でも屋として動いていますが。
どこで探偵だなんて聞いたのです?」
「ある程度有名になった気でいたけど、少し間違って覚えられちゃったのかもしれないね~探偵もできなくはないけどさ!
でもでも!何で私たちがダブルスフィアとして覚えられてないの~及びどうして私の情報は入ってないんだろ~どこをどう間違っちゃったの!?」
すごい速さでオルマーが言葉を乱射している。
・・・でも待って。
「待って、待ちなさい!!」
ついつい私が大声で静止をかけてしまう。
「イエイヌ、貴方さっき初めて会った時センを似ているとか言ってたわよね?まさかと思うけど・・・なにと似ていたのかしら!?」
オルマーも困惑していたけど、イエイヌはダブルスフィアとして知っている様子ではなかった。
でもセンの情報を持っている・・・と言うことは。
「もしかして・・・貴方は今まで、センが未知に対して動いていると思ってたんじゃ?そういうお話を私は知っているわよ!」
もう、確信を得た状態で質問をする私。
「あっ、ごめんなさい。キリンさん鋭いですね・・・確かに絵と言葉での情報ですが、このような名前で聞いてました。
──ギロギロ。
"ホラー探偵ギロギロ"って言う名前です」
・・・やっぱり、とうとうここまで来たんだ私は。
後ろの首筋がビリリっと震える感覚が走る。
「・・・キリンも私を捕縛したときに一瞬言ってましたね、"ギロギロ"。
イエイヌ、ちょっとそれについて教えて頂けません?あと何故イガイガとかトゲトゲじゃないのでしょう・・・?
すみませんが、依頼はその後でもよろしいでしょうか。」
さっき、私の口から教えるつもりがなかったことを察したのか、センはイエイヌから訳を聞こうとしている。
「いいですけど、わたしも何でそういう名前なのかは~・・・」
イエイヌまで困惑しているわね・・・。
先生のセンスよ。そういうところが好き。
やっぱりオオカミ先生の作品は海を越えて広がっていた、私たちの予想通りに!
渡り鳥のフレンズから協力もあったけど、それだけの価値がないと広めてなんてくれないもの!!
最終的には偶然か必然か、先生と特徴の似た娘が私の願い半分以上を満たしてくれた。
それから、イエイヌは説明するため棚へ行き・・・本、漫画を持ってきた。私も見覚えのある表紙。
「これ・・・あるフレンズから買い取ったんです。ホラー探偵ギロギロ・・・。
新作を売ってくれた時にその娘が教えてくれたのですが、実在のフレンズを基にたくさんの親から生まれた作品だって聞きました。
だから、だからこそお願いしたんです。そんな希望にあふれた実在の人物に!
私、こう冷静にしてますがすごい嬉しくて仕方ないんですよ・・・?」
イエイヌは静かに説明をしている。でも、その嬉々とした様子が確かに伝わってくる!
私も敢えて聞こう。
「セン、この描き方見覚えないかしら?あと何か思い出すことない?
貴方を使ったお話、怖いものを使ったお話・・・」
彼女は──
「この描き方、ふふ・・・ぅ、忘れるものですか。約束しましたからね・・・。
あの時は寝姿とか描かれて恥ずかしかったけど、嬉しいものです。モチーフとなった娘が、不明な事象に立ち向かっている!」
少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうにセンはぱらぱらとページを捲っている。
「ほらオルマー見てください!貴方によく似た元種も傍にいる、プロテクターを背中にまいて・・・。
あはっオオカミは私たちを描いている!!」
──ぱらぱら、ぽろぽろ。
センのめくる音と目元、流れ星か綺麗なものが落ちている。とっても、とっても綺麗な。
「センちゃん・・・!そっか、私は覚えてないけどなんだろ、懐かしい感じがするな。あぁ・・・!」
貰い泣いているのかしら、顔は敢えて見ない。
「オルマー聞いて、覚えてなくてもいいわ。
先生は言ってたわよ、貴方はギロギロを守った親だって。大きな元凶を前にセンを安全に帰すため戦ったって!
貴方の思いがここまでを繋いでくれたの!!」
先生の話から、オルマーは少し妬んでいた部分もあったようだけどソレは言わないことにした。野暮だし!
それから、長めに話してしまったけどやっと依頼の内容へとシフト。待たせて悪かったわ・・・。
「......ふぅぅ話を戻します、お待たせしてすみません。イエイヌ、貴方はどのような依頼を私たちに任せます?」
「は、はい私のご主人を探して欲しいのです・・・!」
深く息を吐きつつセンは尋ね、イエイヌもハッとした様子で答える。
「・・・ご主人、ですか?その方の具体的な特徴をお願い致します。」
「あ・・・すみません!ヒトのお方です。姿がその、あまり特徴を覚えてなくて・・・」
少々歯切れが悪いわね。ヒトって言ったらだいぶ絞られるけども。
「んー!一応聞くけどさ、センちゃんを橋渡ししてくれたヒトとは違うよね?私は会ったこと無いけど」
「いいえ、あの大きい方ではありません・・・!」
オルマーも手探りで聞くが、イエイヌの依頼はどうやら小柄のヒトらしい。
ただ、具体的な特徴は分からないようで・・・。かばんの可能性もあるわね。
私からも聞き・・・いや、何ならいっそ。
センたちが探すより、向こうから来てくれれ──
┈┈ビキャッ!!
「ウぐぁッ!!?」
しまっ、少し願ってしまった! 今の性質上、願うのは非常にまずい。
私の一部が......ごとり。
根元から右角が割れ落ちる。大した負傷ではないけどね・・・。
「ひっ・・・キリンさん!?」
「貴方さっきといい・・・一体どうしたんです!?ジャパリまんならまだあります!ほら──」
突如負傷する私に、一同は驚きを隠せない。
さっきより破損が大きい。条件が厳しい・・・?
途中で思いとどまったから大事には至らなかったけど......いや。
逆を言えば私自身は少し消費された。ぐっと見つけやすくなったはず・・・。
・・・それに丁度いいかもしれない。
「いい、大丈夫よ。この現象も多分砂星による性質からくる消費なの。それで今思いついたんだけど、この際だからこの私の角を貴方たちスフィアに預けようと思う。
これを私のいるところへ届けに来て欲しいの。オオカミ先生と同じ場所で、待っているから」
「オルマー。・・・少しいいですか?」
私が話を終えたところで、センとオルマーは聞こえないところへ移動し、見合って話し合いを始めた。イエイヌは私と一緒にいる。
少し私の状態について話しておこう。信じられないでしょうけど──
「砂星がキリンさんの願いを・・・信じますよ、美しいです!
"ギロギロ"を見ていると、物事を受け入れやすくなった気がします」
オオカミ先生も、貴方の発想も大したものだわ・・・。
「お待たせです。
分かりました、貴方の一部を少し預かりましょう。口約束ですみませんが、
センが話す中、オルマーは横からじろりと私を見つめている。
えぇ、もちろん・・・
「──ダメそれじゃ納得できないわ!
悪いけど、センたちも何か託してくれないかしら?先生には安心できるくらいの物を見せてあげたい、私だって強く願ってここまで来たのよ!」
駄々をこねる私にセンは何故か満足気そうに・・・
「ふむ、でしょうね確かな覚悟です・・・試すようなことをしてすみません、魔が差したんです。
ではこれならどうです?オルマーも、いいですね?
少し覚悟を見せましょう、私たちも。」
「さっき話したとおりに、だね。分かったよ」
センはオルマーの返事を聞き、懐から小さくたたんだ紙を取り出して広げる。
これ......センとあの元種オルマーが2人で眠っている姿の絵!? 何でここに・・・?
──ブシュッ!
あっけに取られている中、センはあろうことか自分のウロコで親指に傷を入れだした!鮮血が緩やかに流れる・・・。
そして血の付いた指を絵の右下に押し当て・・・
「この絵、キリンは見覚えありませんか?オオカミが描いてくれた絵です。
そしてこの指跡は私のサイン。痛いけども、どっかの誰かさんは刃先を握ってくれましたっけ。」
絵はセンの住処に置いてあったはず・・・。
あと彼女の言うどっかの誰かさんとは、オオカミ先生のことよね。
「ふふ、私の住処にあるのは彼女が上手く描けなかったと言ってたほうです。上手に描けたほうを島から出る時持ち出してました。」
上手に描けた絵は初めて見る。
鉛筆って物だけを使い、二人と一匹が目をつぶってひと塊に、優しい顔をしている可愛い絵。
影の付け方、線も太かったり細かったりしてとても独特!
普段オオカミ先生の絵を見ている私でさえ見とれてしまった。
「この絵、センちゃん普段から大事に持ってたよ。きっと取り戻したくてしょうがなくなる!でもまだこれじゃあ寂しいよね!!
いいサインだ、私も一緒に入れてね!」
そう言い、オルマーもしっかり親指をセンのウロコで傷をつけ、絵の右下に押し当てる。2人の並んだ、朱くきれいなサインが印記された。
「あの・・・よければわたしも入れてもらえないでしょうか?」
そう言ってきたのはイエイヌ。
「貴方も入れるってことは・・・少し深く、指にケガをすることになるわよ?」
こう私は言うけど、ホントは彼女も入れたかった。覚悟を見たかったの。
イジワルだわね自分でも思うけれど。
┈┈ピシッ
中指の先に少しヒビ。痛くない。
「構いません・・・!わたしも少しほどお礼の証明がしたいと思って。しかも近しい種のお方がこれを描いているなんて。なにか描き手の願いを感じるのです。
わたし自身、大事なお方のためなら傷を負うのなんて怖くない・・・おこがましいかも、しれませんが・・・!」
肝が据わってる、驚いた。
この娘もまた、自分を犠牲にして大事なものを守るタイプだ。本当に危なっかしい。
YES以外の回答はないわね。
──彼女も早速と言わんばかりに指を切りつけ、3人目のサインがあっという間に記された。
「後はこれを持ち、向こうのちほーで待っていてください。オオカミの願いを受け止め、この娘の依頼を達成することで私たちの約束もまた達成されます・・・その後必ずそちらへ向かうので。」
センは真っ直ぐ私を見据えている。
向こうのちほーにいるのは私の本体だけど、イエイヌには分かりづらいかも。
「分かった、約束よ。後は私の時間が許す限りイエイヌの依頼を手伝い、その後に帰り方──
[──フワーッ・・・]
──と思ったけど・・・」
一瞬身体が軽くなり光が目に入る。シックスセンスって言うのかしら?直ぐに察した。
元の場所に戻るのか、はたまたお空へ行っちゃうのか。身体が光り意識が遠のいて、自分がすごく軽くなる感じ。
「キリンさん・・・?今度は何が起こったので!?」
イエイヌはまた静かに驚いている。何度も悪いわね・・・。
「──多分、キリンの願いがほぼ満たされたからか元の場所に帰ろうとしてます。貴方にはまだ伝えてなかったけど、キリンは少し特殊な方法でここまで来たので。
でもキリンはもう願わないでいい、あとは私たちが叶えますから。」
「先ほどキリンさんから聞きました・・・!なるほど」
「キリン、行っちゃうんだね。少しの間だけど・・・楽しかったよ!」
センもオルマーも、私の前に現れてくれてありがとう。
「私はここまでみたいだわね。どっちにしろ向こうで待っているから!」
「ここまでじゃない・・・!これからですよ!!
出会えて本当によかったです、次はわたしも会いに行きますので!」
イエイヌも嬉しいことを言うわね。
「ありがとう・・・!」
ただ、虚ろになる中一つ引っ掛かっていた。
漫画を広めてくれた存在・・・誰なのかしら?なぜたくさんの親だって分かった・・・? 広めるにしても随分早い気がする。
けどもう頭も働かないくらい私の意識は落ちていく、心地いい。
起きたら絶対・・・先生に希望を分からせる!
薄れ浮かんでゆく意識の中、オルマーの姿が目に入った。上目に私をじっと見ている。
─┈!!
なんで。貴方、何でそんな悲しい顔しているの?
┈┈┈▼
┈─
─
「意地でも起きないですね」
「意識がない以上に、何処かへ飛んだ可能性があるのです」
私、タイリクオオカミとセグロはキリンを担ぎやっとの思いで図書館に到着。先の闘いで私とセグロは片腕を壊しており、運ぶのも文字通り骨が折れた。ここの博士と助手に診てもらっていたんだ。
言わずもがな白い姿が博士、茶色の姿が助手だよ。
キリンは未だ目を覚まさない。
上の二言目は助手の言葉なのだが、おかしいことを言う。何処かへ飛んだ・・・?
私に影響でもされたのか?それとも真面目かい・・・?
「つまりキリンは鳥にでもなったと?ここでそれ系のお話とは・・・フフ......アハ......」
「助手は大真面目ですよ、もちろん私も。
フレンズ自体が奇跡みたいなもの、何が起こっても不思議じゃないのです」
「聞いた話だと、キリンはオオカミの旧友であるオオセンザンコウを探し回っていたのです。それが関係しているのでは・・・」
博士はあくまで本気だと言い、助手も博士と意見を交わす。
「キリンをどうすれば元に戻せるの・・・?やっぱボクが引き止めていれば・・・!」
セグロも後悔した様子で戻し方を聞く。
「いいからお前たちはそこで休んでいるのです。二人して腕壊すまで無理して・・・とんだ大馬鹿なのです」
助手は私らを大馬鹿と言う。だが声質は労いを感じさせ、反論する気にならない。
「キリンはフレンズの姿を保っているから心配いらないのです。
それよりセグロ、お前も "たられば" なんか言ってるより無事に戻ることを願っていた方がずっと力になるのですよ」
「博士・・・うん!ありがとうね」
素直じゃない博士に、素直に礼を言うセグロ。
私は、一つ思う。キリンは外傷で目が覚めないのではい。
「きっと転落するその時も願っていたんだと思う。つまり、危険と感じたから砂星が反応したのかも」
ならば私もキリンが戻るよう願いながら──
「オオカミ、早まった考えはよすのです。おまえが無事じゃなくなったら、本末転倒ですよ」
助手が私に静止を促す。読んだか、鋭いね・・・。
「オオカミ、ちょっとこっちへ・・・」
博士が私を奥の部屋へ呼び出す。二人きりで話したいことがあるようだ。
「おまえは、まだ諦めてなかったのですね」
諦めが悪いと言いたげだね。
「・・・きっかけを与えてくれた、私の支えになってくれた存在だから」
「あれだけ私たちも探したのですよ?痕跡もなかったし、先の戦いできっともう・・・。
こう言ってはアレですが、此処までお前は精神的に
それでキリンまで危ない目に合わせてどうするのですか」
本当は無意識のうち、今まで好都合な状況にいたと言いたいのか博士。否定が出来ないよ・・・。
「厳しく言いますが、もう・・・切り替えるべきですよ。オオカミ」
何も言い返せず私たちは部屋を後にする。
─
──
───
「今夜はいい月です、砂星も舞っていて。あの月に皆で願いましょう、きっと帰って来ますよ」
助手が月を差し言う。どうやら昼の間にサンドスターの山が噴火していたらしく、その影響か空はキラキラ透き通っていた。それに倣っているのか月も一層明るい。
見守ってくれてるような・・・考えすぎかな。
・・・ん?
月の光に重なってこちらへ光に覆われたものが降ってくる。砂星の残り香か?
いや、光がこっちに来る!キリンに覆いかぶさるように──!?
┈
┈─
───◆
「うぅっく・・・あれ、私。あ、先生。それにセグロ、博士に助手まで」
・・・目の前に4人。センたちではない。
でもよし、誰か全員分かったわ。
じゃあ私は誰だろう。・・・キリン、アミメキリン。うん覚えている、大丈夫。
「キリン・・・目を覚ましてくれたんだね!」
セグロだわね。1日ぶりかしら、おかげ様でね。
でも彼女、腕が巻かれている・・・。
「おぉ・・・月に願うことが目覚めるきっかけとは、流石は私」
「いやいや助手、最初に願うことが力になるとセグロに推奨した私が流石」
「「自分で言うのも何ですが、賢いので私は!!」」
・・・?博士と助手が、何故かいきなり張り合いを初めてしまった。
様子から、看病してもらってたみたいね。お二方、感謝するわ。
オオカミ先生は・・・・・・いた!
少し私から距離を置いた場所に。起きてゆっくり詰め寄る。
「先生、帰りました。ここじゃ騒がしいので、ロッジに戻ったら少しお話したいことが」
あくまで冷静でいたけど私は。
本当は本当は!早く説明したくて
「キリン、起きてくれてありがとう。もっとキミを大切にするべきだった」
先生から飄々さ、よりも暖かさが。何か違和感ね。
それから私たちは博士と助手にお礼を言い、朝に出発した。帰る場所は当然ロッジ。
先生とセグロはどうも片腕を負傷してたから道中、何があったのか聞いた。私のために、本当心配かけさせたわ・・・。
マフラーを操作して2人を持ち上げられないか試したけど、もうマフラーを動かすことすら出来なかった。砂星の純度が低いとダメなのね・・・がっかり。
因みにあっちで欠けた私の角、こっちでは欠けてないけど、触られても感覚はなかった。
それからロッジに到着、アリツさんも心配そうにロビーで迎えてくれた。セグロは疲労からか別室で眠っちゃったわね。夜に良く寝たはずなのに。
それから、いつもの部屋にオオカミ先生と入る。
だけど、何だろう。先生は何か覚悟を決めたような、そんな雰囲気をまとって私に詰め寄ってきた・・・。
「キリンごめん、本当にごめんね。私はどうかしていた、もっと早くそれに気づくべきだった」
「え・・・?意味が良く分からないのですが」
いきなり過ぎて私の理解が追いつかない。
オオカミ先生が、口を開く。
「──センはね、もう死んだんだよ。」
は?何言っ??
貴方、何を言っているか分かってます?
熱い、目の中にマグマが流れるような感覚だ。
「・・・どういうことで、いつもの
"イイ顔いただき!"
ですか?冗談とかいい。少し勿体ぶろうかと思ったけどもういい!いいです?聞いてください。
センたちに会えたんです!先生の願いと私の願いが混ざり合い、私の中のサンドスターがそれを叶えてくれた!」
どういう作用なのかはよく分からないけど、確かにあったこと。私は必死に説明するが・・・
「・・・前に"死後の世界"について話をしたよね。キミはそれを体感してこの世界を越え、でも戻ってきたんだ。
だけどこんなの違うよ。キミには危険な目に合って欲しくなかった、すまない。
でもここまで本当にありがと──
┈┈
『ずっと眠った状態が続いて・・・いい夢とかも見るんじゃないかしら』
『きっとヤミツキですごく良いところだよ』
┈┈
先生は何もかも失うのが怖かったんだと思う。
けど、けども・・・。
「あの、まさか。私の言ってることを夢みたいに思ってます?ふざ・・・なに勝手に悪い方へ思いこんでいるのですか!?
危険な目に合って欲しくなかった?自分が腕折っててよく言えますね!
疲れてるにしてもふざけないでください!!
先生はセンの最期を看取ったので?それもせず諦めるんですか!?」
怒りを感じる。勝手に諦め、私の願ったことさえ否定している!こんな先生キラい!キラい!!
先生はそれでも続ける。
「・・・センが1日も経たずこの島から消えた話をしたね。仲間たちで探したけど痕跡さえ探せなかったんだ。もちろん空のフレンズにも頼んだ。
それでも見つからなかったんだ!
その時に理解するべきだった。あの元凶の毒に勝てなかったんだよ、人知れず何処かで──」
違う!イヤだ!!やめて!!
「そうじゃないセンは元気です!オルマーと一緒に遠くで先生との約束を忘れないでいた!!」
私が危ない目にあったから?
諦めきれないからこうなったと思っている!?
違う、私は諦めて欲しいんじゃない!
諦めのつく証拠を探してたんじゃない!!
「地下、そうだ地下は見つけました!?
それに鳥のフレンズ全員に頼んだのですか?
彼女は言ってました、地下で海に繋がるところがあってそこから出て行ったって!!」
分からせる分かってもらわないと!!
「この島に地下なんてない。海とも繋がっていないよ・・・」
どうして分からないの先生──!!
───
「繋がっていますよ。」
あ゛ァぁ誰いま忙し・・・アリツさん!?
けど疾風、私が驚くよりも先にオオカミ先生が動いた。
「そうだ・・・キリンが戻ったことですっかり忘れていた!アリツさんどういう事だ?
何でキミがセンの帽子を持っていたんだ!?」
先生、今度はアリツさんに詰め寄っている。
帽子?ワケわからない・・・。
「オオカミさん、ここまで情報が出れば殆ど繋がると思いますが。
キリンさん、その地下のことで向こうのセンさんからもっと聞いたのでは?」
"地下なのに?" の部分から、即座に思い出す。
「・・・!その地下は、"鳥のフレンズからの情報"だって聞いたわ・・・!!」
まさか──
「それが私ですよ。このロッジには地下への通路があり、先に湖があってそこから海へ出られるのです」
「何だって・・・やはりアリツさんは昔の話をしているときには、もうセンたちを知っていたのか!?何で黙っていたんだ!」
私をよそに先生とアリツさんが話している。
アリツさんも関係していたとは。センが此処へ来ていたとは!!
「お互い、ある友との約束を果たすためってことで固く釘を刺されてました。絶対帰るって、私にまで言って聞かなかったんですよ。
オオカミさんの話に、私も運命感じたのです。
漫画のギロギロを見たときから察してました、センさんの言った友ってやはりオオカミさんだったって」
思えばアリツさんも、オオカミ先生が遠くに行かないようこのロッジに留まらせていた気がする。
彼女は、さらに続ける。
「匂いで追えなかったのは、植物を身体に巻いていたからです。もちろん元種オルマーさんも。匂い消しですね」
そう言ってアリツさんは植物を見せる。
これ・・・ロッジに置いてある、"かんよー植物"よね!?
「ちょっと待て、センは毒くだしの植物も分からなかったんだ!匂い消しの植物なんて──」
──違う、センはその時一人じゃなかった。
今度は私が口を開く。
「依頼人を紹介したヒトが教えたんだと思います。
センも、ずるずると先生たちといたら未練を感じて踏ん切りが付けられなくなる、飛び出したいと言ってたので」
「ワケが分からない・・・ヒトって誰だい、かばんか?なぜそんなことをしたんだか!」
「そのヒトは分かりませんでした。かばんではないです。
それとセンは意地を張っていた。でも先生なら、約束を忘れず達成できると信じてましたよ。
これ、預かりものです」
そう言って、向こうで預かったセンとオルマーの絵を見せ渡す。私も頭に血が上り、この時まで預かっていたことをすっかり忘れていた。
向こうから戻っても、所持していて正直安心したわ・・・。最も、そう願ったからかもしれないけど。
「これ・・・は」
「センさんと、あのオルマーさんですね」
先生も、アリツさんも驚いた様子で見ている。
絵にはしっかり3人分のサインが入っている。
大丈夫だ、もう大丈夫。
「諦めず長い間待ってたんですよね。私からもお礼を言わせてください、本当にありがとうございます。もう彼女たちは来ますから。
先生はこれからも、自分の"好き"に対して正直でいる、私の先生であってください。
もっと"いい顔"も出来るようにしますから」
3つのサインが記された、一人と一匹が描かれた絵を渡す。
今は少しだけ。
これが "生みの親たち" の道しるべ。
──┈
┈┈
┈§
『
補う者が引き寄せられ、愛され生まれた存在。ふふ、続きが楽しみですね♪』
┈┈──┈┈──┈┈
『依頼も遂行し、やっと帰って来れましたね。
オルマーもお疲れ様です。』
『うんうん。少し掛かっちゃったけどね』
『流石に疲れましたね・・・今日は休みますか。』
『急いでいい結果は出ないしね、分かったよ』
『明日すぐ向かいましょう、友人を待たせちゃいけないので。』
『!! あ・・・センちゃん』
『どうしたのです?そんな焦った顔して。』
『多分、プロテクターさっきの場所に忘れたか・・・。少し先に行っててもらえるかな!』
『何をしてるのですか・・・。すぐ戻るのですよ待ってますから。』
『うん、すぐまた後でね!』
──ごめんね センちゃん。
┈┈──┈┈──┈┈
ホラーたんてい「生みの親」 たち くろかーたー @kurokata
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