やっとゆっくり話せるわね...。


 ┈▼

 タイリクオオカミだよ・・・。

崖下にて横たわるキリンを見つけた。へいげんへ行く途中、ぬかるみで崖から落ちたのだろう。

 すまない、私のために・・・。


 こんなことなら、センとの過去を話すべきじゃなかったのかもしれない。決別しきれなかった私が悪い。


 幸い、柔砂と木の葉がクッションになっていたからか外傷はないが、キリンが目覚めない。様子を見てもらうため、博士たちのところへ行くことにした。


だが、後ろからキリンによく似たセルリアンが・・・


 ┈▼


 セグロが千切られてしまう!


 ─ザグッ!!




 「うぅあっ!!ふふ・・・痛い!

爪が骨まで達した音ぉ...でも、ううぅ・・・─!!」


「セグロ・・・!? な、なんだどうなっている!?」


 2本の触手。

セグロの左腕はセルリアンのマフラー爪が深く食い込んでしまっており、もう片方は頭に食い込んでしまっている    。





 ・・・だが。刺さり込むセグロの頭、何か逆立っている。ウロコ・・・!?


 「・・・上手く、、行ったぁぁ!!」


 彼女は何かを被っていた。見覚えのある・・・それに触手が突き刺さっているのだ。


 「何でキミがを持っているんだ!?」 


 「後で話すから早くこいつ・・・えりゃあ!!」


 左腕から触手を抜き、頭の逆立ったウロコに突き刺すセグロ。帽子は強く吸いついているようだ。ヤツが強く引っ張ってもセグロの頭から全然抜けていない。


 弱点の場所が分からない?ならば・・・



 頭をハねるしかない!

すかさずセルリアンに近づく。マフラー部分はセグロがハリ付けにしたので首を狙えるぞ!


 ────ッ!!


 セルリアンが振り向きざまに右足で蹴りをかます、いわゆる回し蹴りだ。

 

 ─バギァイ!!

 「「うぅっく!! ぅぁッ!!」」


 右腕で受け止めるが、すごい衝撃と激痛に顔が歪む。

・・・そうか。セグロが聞いた骨の音はこういう音をするんだね、フフぅ・・・。

 ヤツは両腕を使って私を阻止しようとするが、それよりも私の方が早いよ!


 一瞬だ。

 左手の爪を野生解放に乗せ、一気にセルリアンの頭を斬り離した・・・!


 ───ビャッ!!


 還った、もう動くことはないだろう。

・・・イイ、ホラーのネタになったよ・・・。


 「ッくぅぅセグロ、大丈夫かい!?」


「うん、でも二人して大怪我負っちゃったね・・・。

休みながらでもキリンを持って博士のところへ行こうよ・・・!」


「あぁ・・・頑張ったね、お利口さん。休みついでで悪いけど早速聞きたい。

何でキミがセンの帽子毛皮を持っているんだ?」


「うん、それなんだけどね・・・ボクも聞きたい─


 「いやセグロ、まず結果を・・・

 「オオカミ、・・・ボク話してる途中だぞ?」


はやる気持ちか、セグロを遮る形で聞いてしまった。少し不機嫌になっているようだ、すまない。


「いい?これね、さっきロッジから出るときアリツカゲラさんからもらったんだ。お守りにって。

 多分、彼女が何か知っているんじゃないのかな・・・?」


 アリツさんが・・・?どういうことだろう。

私が昔話をしたとき、もうセンのことを知っていたことになる。思えば、センを知らないとは言ってない気がする。


 キリンを元に戻して、聞く必要がありそうだ。


「悪かったねありがとう。よし、キリンを運んでいこうか・・・」


 セグロは右腕が、私は左腕がまだ無事だ。古傷も兼ねて、右腕が痛む・・・。


 目覚めないキリンを真ん中、右に私、セグロを左にして肩を貸す形で図書館へと歩を急ぐ。

 へいげんは・・・また次に行こう。

 


 もしキリンが戻らないなら、もういい。私が間違っていたとしてこの先は─


 ・・・・・・



┈┈

┈──◆


 キリンだわ。

 四つ足の球下げセルリアンを倒したいんだけど、石がお腹のところにあるの。

つまり地面近くに接していて潜り込んで叩かないといけない。

 でもこのセルリアン、どうも威圧の性質があってどうしても近づけないし攻撃できない。


 と言うことで、私が遠距離からマフラーでセンとオルマーを弱点へ投げつけて倒すことにしたわ!

 ふっふーん♪



「オルマー、投げるわよ!大丈夫、絶対うまく行くから」


 「や、優しくしてよ~目回りそうだし・・・」


初夜のセリフみたいね・・・。要望としてはNOかしら、激しく投げそう!


 上手く潜らせる!股下で止まりなさい!

──それっ! ブンッ!!




     ┈┈パキッ





 ・・・あれ?なぜか左ほっぺに亀裂が走った。

 痛くはないけど・・・え?


「ん、キリン流石ですね。オルマーが見事股下に入り込みましたよ!」


・・・確かに思った通りにうまく行った。それも、飛んでほしい場所へとピッタリに。

 センは右に居るからか、ヒビが見えてないようだ。よし、慌てさせるわけにはいかない。


「え、えぇ当然よ。セン、次は貴方を飛ばすわ。向こうのオルマーに当てつけて、弱点の石へバウンドさせる・・・さぁ丸まってね」


 思った通りに・・・。これってまさか。

・・・まさかと思うけど─。


 今度はマフラーを操作し、センを少し高めに持ち上げる。


 よし・・・彼女を斜め下に飛ばし、向こうのオルマーを跳ね上げ石に思い切り当てる!


 「たぁー!!」


 ─ブゥン!


 思い切り上から向こうへ投げつけるが、少し方向をあえてずらしてみた。試すために。

 するとセンは思わぬカーブを描き、やはりオルマーの方へ向かい・・・。


 角度ばっちりに飛び上がった!


   ┈┈パギギッ・・・

  ─バッカァーン!!



物のあっけなくセルリアンは砕け散った。あんなに大きな図体のくせして。


 ただ・・・今度は感じる、痛い。

─両腕に大きなヒビが入っている。


「すごいよ!あんなに大きなセルリアンをキリンの方法だけで簡単に倒せちゃうなんて!」


 セルリアンの破片と埃を払い、向こうからスフィアの二人が戻ってきた。


「素晴らしいコントロール・・・ですが、私は何か喜べないくらい上手く行きすぎたように思えてならな─

キリン・・・貴方、それは!!」


 オルマーは一瞬気づいてなかったけど、センは気づいたか・・・。

 破損、見られちゃった。

 そしてやっぱりだ、間違いない。



 私サンドスターみたくなっているってことは、願いを叶えるという性質も備えちゃっているってことか。

 つまり思い願い通りになるけど、代わりに自分自身が消費されちゃうような状態・・・なのかもしれないわね。


「何ボーっとしてるのキリン!?

早くボスのいるとこ戻ってジャパリまんを食べて!行くよほら!動ける!?動けないなら私がまたおぶるから!ほら!!」


 あらあら、オルマー涙目になって焦ってる・・・。

自分の状況に感覚が追い付いていないのか、私ぜんぜん慌てる気にならないわ。

・・・放心状態なのかも。無意識にオルマーの背へまた乗っちゃってる。


 願うたびにってことは・・・私にはもう時間がないのかも。センに願いを伝えないといけないのに・・・。


 行動ではなく、オオカミ先生の所へ帰ってと願えばそれで解決するのだろう。

 その場合、私はどこまで自分を消費しちゃうのかしら・・・。



 あぁ私を消費してセンが尋ねれば、先生は喜んでくれるかしら......?


 ┈┈


『オオカミ先生。もしですよ?

私が居なくなる代わりにセンたちが戻り、会えたとしたら嬉しいですか?』


『・・・フフなんだいそれは、等価交換のようなものか?私からいい顔をいただこうとしてるのかい?』


『あ、ふと思ったことなので気にしないでください。魔が差したってやつですかね』


『・・・正直ゾッとした、いい助手だよ全く。

もしかしたらキミは、自分とセンのどっちが大事なのか無意識に聞きたかったのかもしれないね』


『あ、いえ・・・そういうわけでは─』


『いいかい?センが戻ってこないのなら私の力不足が原因だ。して私の力不足を補えるのはキリン、キミだけなんだ。

 センがいつまでも戻らないのなら、私が力を付けるのが遅すぎた・・・それだけなんだよ。


 分かるかい?キリンとセンを交換とか代償にじゃない。どちらかが欠けたら私の願いは叶わない。


・・・だから、居なくなるとか絶対言わないで欲しい。

頼むから』


 ┈┈



 あぁ、そうだ思い出した。先生そんなこと言ってたっけ。ダメだ、うん。願うだけじゃだめだ。


 行動で入らないとダメだ。先生だって描いて力を付けるという行動で生きている。口で伝えるっていう行動からでも入らないと。




「うぶっ!?もごごもご!!?」


 急に口に何か押し込まれ、ぼーっとした意識がはっきりした!


「キリン、早くジャパリまん食べて砂星補給して!

水あるよほら、さっきぶっ掛けて本当ごめんね!センちゃんに引っ付いてたの見たからついついだったんだ、何かお願いあるなら何でも聞くから教えてよ遠慮せず─」


「オルマー!キリンもそれどころじゃないんだから落ち着きなさい!」


 「ぶはっ!いや、ありがとう二人とも。文字通り生き返ったわ、ほら!」


 見ると、先ほどの腕のヒビは砂星を補給したことで回復している。ほっぺたは見えないけど、ここも大丈夫でしょう。




 ─少し休息をとり・・・



 「さて、やっとゆっくり話せそうですね。」


 「・・・えぇ。」


「私も一緒に聞きたい!分かる?分かるかな、この気持ち!」


「えぇ、オルマーにも聞いてもらうわ。どんな風だったか聞きたいでしょ?」


 ─やっとだ。この時がやっと始まる。




「じゃあそうですね・・・まずキリン。

オオカミのために私たちを追って、よくここまで来ました。素晴らしい執念ですよ。」


「やっぱり貴方、オオカミ先生を覚えていたのね。さっきは、しらばっくれて!

 もう予想しているけど、ここはキョウシュウではない・・・のよね?」


「懐かしいちほーですね。確かに私たちはそこから移ってきました。ここは海を渡ってだいぶ歩いた先、ナカベちほーを行った先ですが名前は不明です。

 海を渡った理由は依頼があったことと、オオカミとの目標を達成するため。」


「依頼?目標??

目標っていうのは、広まったオオカミ先生の漫画を遠くの地でも見つけることよね?依頼って言うのは?」


「目標に付け足すと、私らは何でも屋の活躍ですね。こちらも名前が知れ渡り有名になること。

 依頼は、ある人物から。遠いところで助けを求めているフレンズがいると言うことで。

 オルマーもフレンズにまた成れる可能性があると言うことで渡りました。」


「こっちに来れてよかったと思っているよ。これでも結構名前は知れ渡ったんじゃないかな。

私も、感はセンちゃんより自信あるしね!」


 オルマーも胸を張ってそう言う。


「分かっているわ、何でも屋の件は渡り鳥の娘から聞いている。貴方たちの条件は満たしているわ。

で、気になるのは要望の人物。それ、誰かしら?」



「守秘義務ってやつですけどね・・・。ヒトの娘?でしたね。名前は聞きませんでしたが。あ、遠くで助けを求めている娘とはまた別人ですよ。」


「一応聞くわ。帽子を被って、上半身が赤と黒、ズボンが白い娘だったかしら?」



 言わずもがな、かばんのことよ。



「いえ、帽子はその時被ってませんでしたし赤い服装ではありませんでした。今はその方と別れてます。ただ、依頼を遂行すればもう自由ですね。」



─流石にかばんではないか。

 依頼主は大した重要ではなさそうね。



「・・・あとまだ気になることがあるんだけど、貴方たちどうやってキョウシュウから出たの?オオカミ先生もセグロも見つけられなかったって言ってたわ」


「セグロですか、懐かしい・・・。あと、未練がましくなるので黙って出発しました・・・すみません。


 あのちほーからは、地下の海から出ました。地上だったらすぐ見つかったでしょうね。依頼主も、その日のうちにオオカミとほぼ入れ替わりで訪ねてきたんです。


 鳥のフレンズが地下を知っていて、海のフレンズにも2人ばかり手伝ってもらい・・・あと依頼主が *せんすいかん*? ってのを持っていたので。」


 地下・・・?そんな場所あのちほーにあったのね。

 鳥のフレンズが地下を知っているのもすごい。

 ・・・?


「で、明日には助けを求めているフレンズに会えると思います。何でも、この無名のちほーに滞在していて、私の知ってる娘によく似ていて。向こうも私を知っているとのことです。・・・誰でしょうね?」


「人物の探索なら私に任せて!きっと私が役に立てるよ」


 オルマーがさらに胸を張っている、頼りになるわね。


 日が落ちて夜になってしまった。道中、相談事を持ち掛けるフレンズも何人かいたけど3人でさばいて・・・。

 楽しかった。短いけどいい旅だと思っていた。


 道なりに歩いていると、小さな村のような、集落がある場所に到着した。

 夜も更けているので今日はここで休もうかと3人で打ち合わせていると、私たちの元へ駆け寄ってくるフレンズが。


 この時、何故かある種のピリオドを感じた。先生が元凶の所へ行くときってこういう感覚だったのかしら・・・。



「うわぁ、やっぱ似ているなぁ・・・。

この日を、どれだけ待っていたことか。」


・・・?似ている?この娘かしら、依頼主って。私はあいにく夜目が利かない。だけど、センは─


「貴方ですか? ・・・!なるほど何てこと。確かに私の旧友に似てますね貴方は。


イヌ科だし、その色違いの目・・・ふふ。」


「きみだね依頼主って言うのは!何となく読めた、さっき話していたオオカミってフレンズがきみと似ているんだな!」


 センとオルマー、そしてそのイヌ科の娘は暗がりの中、私の目の前で納得したように会話をしている。


「ど、どういうこと!?明りのある場所へ行きましょう、貴方の姿を見せて~!」


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