読ませるお話が、とても素敵な作品です。そして何より気持ちの良いお話です。
作品の世界観とヒロインの性格に合わせたような文章で、飾り過ぎずシンプルにテンポ良く読み手をお話の世界に引き込んでくれます。
「後宮」という特殊なフレーズが想起させる「お約束」を大切に、そして丁寧につないで作られたお話は、一連の真珠のネックレスのような印象を受けました。
得意分野なのでしょうか、ヒロインが合理的な考え方と高い行動力で「後宮」という世界を立ち回る姿が違和感なく描かれていて、とっても共感できると思います。
ちなみに、この作品で描かれる恋は、ジレジレでも、うっとりするような甘さでもありません。
いつの間にか湧き出ていた想いを、ケレン味なく恋だと受け入れるヒロインの「初恋」が清々しいまでの潔さで描かれています。
恋愛小説ファンの偏った見方かもしれませんが、敢えて描かれなかった「とある人物」の想いなども考えると、本当に初恋のあらゆる面を描いた作品なのかな…と思いました。
好きなお話を読んでいると、いつまでも読んでいたいと思ってしまうのですが、このお話に関しては、先を読みたいという気持ちの逸り具合が激しいので、完結してから読めて良かったと思いました。
最初に無理難題をふっかけたのは祖父だった。
主人公は薬屋を継いで商売がしたい。でも祖父は孫娘に嫁に行ってほしい。諦めの悪い孫娘を諦めさせるための無理難題だった。
ところが主人公は持ち前のたくましさと賢さと粘り強さで見事解決……かというところで今度は後宮行きが決定。自分など皇帝に見初められるわけもなし、一年で市井に戻れると高をくくっていたら、皇帝がらみのとんでもない無理難題をふっかけられることに。
生きて市井に戻れるのか、好いた男との恋の行方はどうなるのか、というお話。
軽快な語り口で読ませる作品。
主人公の思考は商売人のそれで、後宮での嫌がらせに対しても冷静に分析して対処する。読んでいて気持ちが良い。
ここからどう難題を切り抜けていくのか、ワクワクしながら読んでいます。