ともだち。
「あれだけの知名度と人気だよ!?
絶対選挙で票もらえるから!
生徒会、入るでしょ!?ね!!」
春川綾芽はそう言った。
「い、いやぁ、いきなりだなぁ春川さん。
ちょっと考えさせてよ、ね?」
俺が少しかっこつけながらそう言うと、
「あー、綾芽でいいよ。
あ、授業始まっちゃう。
なんか問題あったら私に言ってね。
それじゃ!」
嵐みたいな人だと思った。
それから放課後まで、なんだかんだ
いろんな人と話すことができて、
なんとか彼女にも話しかけられずに済んだ。
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帰りのホームルームが終わると、
また嵐はやってきた。
「ねぇねぇ、今日生徒会室見にこない??」
「うわぁ、急だね、春川さん。
そ、そうだなぁ、今日はちょっと
用事あるから、また今度にするよ」
「今度かぁ、じゃあ明日ね!」
「う、うん。(圧が…)」
その日はそのまま帰れた。
なんだか先の思いやられるような、
幸せなことのような。
まあなんにせよ、あの頃よりも
ずっといい生活が出来そうだ。
ふと去年のことを思いつつ帰路についた。
------------
次の日。
「おはよー!」
「あ…春川さん、お、おはよー…」
「生徒会室、今日だからね!
忘れてないね!?」
「う、うーん、忘れてーないよー(棒)」
「ならよかった。じゃまた放課後。」
(…こ、怖い。)
心の中で呟いた。
やっぱりとてつもない人に
目をつけられたような気がする。
とまあこの言葉には
もう一つ、別に意味がある。
というのも、昨日から、
俺が春川さんと話している間、
どこからか視線を感じたからだ。
ふと見回してみると、ある男子がいた。
声をかけてみる。
「や、やぁ。」
「っ…!?」
「あ、急に話しかけてごめんね、
俺は都凪 晴って言うんだ。
よかったら仲良くしてくれないかな、
昨日スピーチした転校生なんだけど。」
「ぁ…ううん、いいんだ。
僕の名前は
こ、こちらこそ、よろしく…」
(や、やっぱすごいな、
スピーチの通りの人だ、
コミュニケーション力の格が…
ぼくなんか
人に話しかけるなんて無理だなぁ。)
「うん!よろしくね奏翔!」
ちょ、ちょっとフレンドリーすぎるかな…
でも小中のときとか名前呼び普通だったし…
もうここ数ヶ月家族以外と話してないから
間合いの取り方わかんねぇ…
「…ぇ」
「わわ、ごめん、
やっぱ名前呼び嫌だった?」
「…ぁ、ううん。突然でびっくりしてつい」
(一応変な立ち回りはしてない、はず。
それにしてもこの人見るからに
完璧だよなぁ。にしては変だよなぁ。
転校してきた距離そんな遠くないし…
んん、聞いてみようかな)
「ぇ、えーっと…は、晴くん…」
(わわっ、相手に合わせて名前呼びなんて
しなくてよかったよなぁ、うぅ…)
「え、なになに!名前で呼んでくれたの?
嬉しいな!どうしたの奏翔?」
ラッキー!よかったぁ
完璧に嫌われたかと思った。
名前で呼んでくれるの超ひさしぶりだし、
こんな嬉しいもんだったっけかぁ…
しみじみ。
「う、うん、そのぉ、
どうして転校してきたのかなって…」
…ぇ。
うぅ…っ!!痛い、痛すぎるっ!
友達に、なれそうだと、思っていたのに…
突然刺されたっ!痛いとこ突かれたぁぁ!
「ぁ…あぁ、そのことか…」
やべえなぁ、考えてなかったんだよな。
なんて言い訳するかなぁ。
さすがにいじめられたから、なんて…
「ごご、ごめん、聞いちゃだめだったかな」
(人と話すのひさしぶりだから
距離の取り方わかんないよぉ…)
「うっ、ううんっ!
そ、そんなことっ、ないよ!」
「…」
(いやいや、
絶対聞いたらまずいやつじゃんこれ。
あー、やっちゃったなぁ)
「あ、あのー、あれだよ、ほら。
おぉ、お母さんのぉ療養でね。」
さすがにこれではしのげねえよなぁ…
「え、そうなの!?
お母さんの体調悪いんだぁ…そっかぁ。
うちもお母さんが病気がちでね、
気持ちはわかるよ。」
んぇぇなんとかなってしまったぁー!
うっそみたい。
「あ、奏翔のお母さんもなんだ、そっか。」
「そうそう。そうなんだよね。
あ、あと…あのさ。
よ、よかったら
友達になって、くれないかな。」
「ぇ。ぜ、全然いいよ!
うんうん、なろなろ!」
うわぁ嘘ついてからの友達はきついー
心痛むー。
「ほんと!?
あ、あのさ、話しかけてきたときから
思ってたんだけど、
めっちゃコミュ力あるよね、
なんでそんな話せるの!?」
「ま、まぁ
話すことに慣れてるから、かな。」
いやいや俺えらそうなこと言えねー。
まあでも小中は陽キャで売ってたし。
けど思えばどうしてこんな話せるんだろ。
不思議だな。
まあ友達なんていつのまにかできるもんだし
会話もいつのまにかできるのかもな。
友達になってください、か。
ひさしぶりに言われたな。
この学校でちゃんとできた最初の友達は
奏翔だな。よーしっ仲良くしようっ!
心の中でそんなことを思った。
「ふぇぇ、
むずかしいことさらっと言うよね。
んー、頑張るかぁ。」
(ほんとにすごいなぁ、晴くん。
ってあれ?そういえばさっきまで
この人のこと怖がってたのに。
いつのまにか友達になってる。すごい。)
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「あ、そういえばね、今日の放課後、
生徒会室の見学があってね、
よかったらついてきてくれない?」
「っ…!い、行きますっ、
ぜひっ、行かせてください!」
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こうして、世界は回り始める。
たった1人、
彼女を一言で表すとするならば、
孤独であろう。
時が経つごとに彼女の孤独は深まってゆく。
序章の序章が、今、始まったのである。
後戻りなんてできないんだ 都凪のいせ @1523_noise
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