物語の世界はこの星——地球ではない別の場所。竜と人間が生きる世界。
竜族であるはずなのに人間として生まれた少女ティリーア。そして彼女に恋をした光の竜ハルの恋物語が主なテーマです。
しかし二人は時代の流れに翻弄され、国や人々を巻きこみ壮大な幻想譚として描かれていきます。
果たして二人に穏やかな日々は訪れるのか⁈
豊富な語彙、巧みな表現で描かれる世界は読んでみると唸ってしまう。「こう表現するのか!こんな言い回しがあったか!」と読んでいるだけで勉強になります。
なにより流麗、緻密な文で表現された文章は自分の中にありありとその世界を作り出すのです!
読み終えた後に「ああ、そうだ。読書ってこんなに楽しいんだ」と思わせてくれる。そんな物語を是非手に取ってみませんか?
序盤から、壮大にして加速を募らせ続けるお話であった。それでいて地べたに足をつけた、確かな描写が途切れず続いて作品を磨き上げている。
作中で題材となる要素をここで一つ一つ列挙するのは、個人的には止めておこう。なにか、大事な読後感に差し障りかねないような気がする。無論、私がそうだというだけで他人様にどうこうしたいのではない。
ただ、種としての竜なり人類なりの行く末を描いていくと必然的に居心地の悪い成り行きも出さざるを得ない。作者はそれをあやふやにしたりせず、そこをどう乗り越えるかで一つの道しるべを呈示したことは間違いない。
昨今の流行からは外れているかもしれないが、是非ともこうしたスタイルを貫き作者自らの『世界』を拡げていってほしい。
竜ならざる人にとっては、それこそが『永遠』に近づく唯一の方法だろうから。