DNAギャンブルのやりすぎにはご注意ください!

ちびまるフォイ

これはギャンブルじゃないから恥ずかしくないもん

「あーー退屈だ。怪獣でも襲ってこないかな」


変わらない日々に退屈してスマホで情報をあさっていると、

どんどんディープな情報ばかり深掘りするようになり――


「DNAカジノ!? 面白そう!!」


怪しい情報を見つけてしまった。

DNAカジノ会場に行くと、案内人が出迎えてくれた。


「DNAカジノのご利用は初めてですか?」


「なぜそれを!」


「顔が田舎クサ……ごほん、いえ、お客様の顔を存じ上げていなかったので」


「DNAってのは?」


「当カジノでは金銭ではなく、ご自身のDNAをチップにします。

 たくさん稼げば多くのDNAを受け取れますよ」


「……あんまりうれしくなさそうだね。帰るわ」


「待てや!!」


案内人は慌てて肩を掴んだ。


「DNAをたくさん手に入れれば、それを換金も可能です。

 世界には優秀なDNAを求める富豪がわんさといますから」


「なるほど」


「それに、一定以上集めれば動植物、はては人間の生成も可能。

 つまり、あなた好みの人間をDNAから作ることもできますよ」


「すぐにやります!!」

「さぁどうぞ」


自分のDNAをチップに変えてカジノに入った。

ディーラーがいて、テーブルがあり、ギャンブラーがチップを賭けている。


「思っていたよりは普通だったな」


ただ、一流カジノのように気品あふるる人ばかりではなく

カジュアルな服の人や、ホームレスのような人も参加している。


お金はないけれど、DNAなら賭けられるのだろう。


「よーーし、稼いでやるぜ!!」


 ・

 ・

 ・


ギャンブル開始から数時間もすると、俺のまわりは人だかりができていた。


「すごい! また当てやがった!」

「とんでもない人が来たぞ!」

「ディーラーとグルなんじゃないか!?」


「怪しいと思うなら、いくらでも調べてくださいよ」


なにか装置を隠していないと証明するため、

全裸のままゲームを続行し、チップを荒稼ぎしまくる。


こちとら、異世界でチートを与えられたあと

出禁を食らって現実に戻されたのでチートは所持のまま。


カジノのゲームごとき負けることなど無い。


「よーーし、あとひと勝負!」


最後の勝負もジャックポットで大勝利を収めた。


「これだけ稼げば、理想の嫁をDNAから作る事ができるはずだ」


チップを持ち帰ろうと振り返ると、チップはなくなっていた。

1枚も置いていた場所にない。


「え!? お、俺のチップは!? 俺のDNAは!?」


ちょっと目を離したスキに誰かが持ち去ったのだろう。

このままチップがDNA変換されれば、俺のDNAまで奪われてしまう。


なんとしても取り戻さなくては。


地面に触って残留思念をサイコメトリーすると、

俺がゲームに夢中になっている間に持ち去る男の後ろ姿が見えた。


「この野郎! 逃してたまるかーー!!」


俺の大声に気づいたのか、逃げる男は一瞬後ろを振り返り速度を上げる。


けして逃してなるものか。

俺は加速装置のスイッチを入れて男に悪質タックルを決めて取り押さえた。


「もう逃げられないぞ! 俺のチップを返しやがれ!」


「ひいぃ! すみません! 魔が差したんです!!」


男は抵抗するのを諦めたのかすぐに謝った。

その男の片腕がないことに気がついた。


「お前、その腕……」


「じ、実は、私このDNAカジノに入り浸っておりまして……。

 その際にこの腕のDNAを失ってしまったんです」


「……」


「ああ、どうか、どうか、DNAを分けてもらえないでしょうか。

 私には妻がいます。子供にこんな欠落だらけのDNAを遺伝させたくない」


「つまり、お前はDNAカジノで大損して

 失ったDNAを埋めるために俺のチップを盗んだのか」


「子供は幸せに育ってほしいんです。

 もしチップを分けていただけたら、私はもうこのカジノの客になりません。

 真面目に仕事をして生きていくと誓います」


「……いいよ」

「え?」


「いいって。俺のDNAぶんだけは残して、持っていけ! 全部!」


「ぜ、全部ですか!?」


「俺の才能ならまたこれくらい稼ぐのはわけないからな。

 今日くらい人助けをしていい気分になって、

 読者の高感度をあげて人気投票の票稼ぎくらいしたっていいだろう」


「ありがとうございます! あなたは神だ!!」

「いいって、いいって」


いい気分でDNAカジノを出て、その日はよく眠れた。

また翌日にDNAカジノにいくとまだ開店していなかった。


「ちょっと早く来すぎちゃったかな」


時間潰そうかと思っていたが、カジノの中から声が聞こえる。

聞き耳を立てると、聞き覚えのある声だった。


『お手柄だったよ。あのままDNA持ち去られたらどうなるかと思った』


『いえいえ、異世界帰りなんてチョロいもんです。

 それらしいことを言えば良心に突き動かされていくらでも回収できますよ』


『今度からチートは禁止にしなくちゃな。

 万に一つも当たらないはずなのにチートで因果律変えてきやがる』


『そのときは、また私が盗んでやりますよ。ははは』


声は昨日捕まえた男と、案内人だった。

最初からDNAを回収するために動いていたんだ。


「ふざけやがって! もう二度と来るか!!」


入り口のドアを苛立たしげに蹴って、心に誓う。


「もうギャンブルなんて、絶対しない!!」


これを読んでいる人にもギャンブルでDNAを集めようとしないように。

俺の体験記からなにか学び取ってもらえれば幸いだ。


ギャンブルなんて絶対にダメだと。



「なんだこれ? DNAガチャ!? やるしかねぇ!!」

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