第34話 コソ泥はお姫様に殴られるとすごく痛い

「……固えな」

「うっさいんじゃ」

 目覚めたジョーノが漏らした感想にミオニスが抗議した。ミオニスに抱きかかえられたまま、寝床に横になっている。

 と、違和感に気づいた。自身の身体にくっついているもう一人の存在、ネゴである。さらにやつれて、眠っているにも関わらず死体に見える程不健康である。

「飯食ってる?」

「少しはのう」

 ミオニスがジョーノを強く抱いた。

「まだ気になるか?」

「しょうがねえだろ」

「そのしょうがねえが無くなったら、おどれの一番はどこにいくんかのう?」

「……飯かな」

 ジョーノはミオニスに体を向けた。

「あほが」

 硬い拳が頭にめり込む。

「わしがおらんとダメなくせにの、明日からまた特訓じゃ」

「戦いは続くのか?」

「生きとう限りはの。おまけにロロムもやり込めたんじゃ、兄上も気張ってくるぞ」

「……やだなあ」

 前途多難、いつも通りのジョーノの人生だった。

「どうすりゃいいんだよ」

「魔王になればまあ、ひとまずは安心かの」

「魔王か」

「細立にゃ無理じゃがの」

「そうか?」

「おどれには無理じゃ、わしがおらんとダメじゃからの」

「そういう魔王もいいんじゃねえかな……」

 一先ずは眠ろう、ジョーノはそう思った。

 この硬くて腹立たしい、愛しい姫君の傍で眠れる。それだけでもましだと思った。

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コソ泥はお姫様に殴られるとすごく痛い あいうえお @114514

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