眞城城歌(羽鳥)さんの名作『星刻の鍵』の続編にあたる本作。
王立魔術具開発部研究所の所長である黒衣の魔術師リトが、その立場ゆえに何者かに攫われてしまいます。普段から奇行の目立つ彼ですが、このときばかりは囚われの姫。仲間たちが懸命に居場所を捜索することになるのです。
リトが狙われた理由は、彼の開発したルーンリングにありました。それには、闇属性の高位魔法が封じられており……
痛々しい場面の多い作品ですが、優しさと勇敢さにも満ちあふれた物語なので臆するには値しません。
心の制約は、魔法にかけられるまでもなく、自分の生き方を定めてしまっています。それをほどくのは人との絆かもしれません。また、新たな制約を胸に抱くことが、決して悪とは限らないことを、この作品は改めて気づかせてくれます。
ここだけの話、やんわりとBL風味があるので気になる諸氏は注目しましょう。決して直接的な表現はありません。だからこそ要チェック。仄かな風味だけが味わえます。
他者の心を動かすことは簡単な話ではありません。
どんなに心を込めた言葉をかけようと、どんなにその身を尽くそうと、突っぱねられてしまったらそれまでで。
どうにも孤独で、独りが普通のことだと思い込み、長く生きていたリトアーユ。
でも知らぬ間に彼は他者との繋がりを持っていて、更には彼と繋がった者々は皆、彼を当たり前に気にかけていました。
「生きることを諦めないでください──」
簡単な言葉で、リトアーユにはなかなか刺さりません。
瀕死を体験して、隣の他者が大切な者だと気が付き初めて、あの言葉はリトアーユに沁みていくわけです。
そのじわりじわりが尊くて、こちらの心を刺してくる。うん。いい。
血生臭くてきな臭い。
でもそれが絆だったと気付いたら、命がけなのも悪くはなかったのかもしれません。
リトの表情の変化を、是非ともご覧いただきたいです。