Prologue-2.5
「っ………」
何か言いたげにガルヴァンは右腕を出すも、ブーツの上に落ちたものに気付き、それを見る。
炭のように黒く、柔らかいのか落ちた衝撃で崩れていた。
それを拾おうとしたが、拾えなかった。
否、拾える手がなかった。
よくその炭を見ると、それが手の形をしているのがわかった。
右手が崩れ落ちたのだ。
左手で触れると、瞬時に手を引っ込めたくなるほど熱かった。
「…これは……」
「ガルヴァンさん!」
聞き覚えのある声。
振り返ると白いオルフィス教の聖職者の服を着た金髪の青年……アルバがこちらに駆けてきた。
「アルバ!…すまない。シロガネを逃して…」
「それは大丈夫です。足取りは掴んでおりますから。それよりも!」
アルバはまるでまだ身体に残った、木炭のようになってしまった本来は右の二の腕にあたる場所を掴んだ。
掴んだ途端に右腕はボロボロと崩れた。アルバは心配そうに言う。
「無茶しないで下さいよ……復活して数日しか経ってないんですから」
「あまり痛みを感じなかったから平気だと思ったのだが……そうもいかなかったな」
ガルヴァンはアルバの目を見る。
「心配をかけたな、アルバ。だが何とかなる」
「……何度も私はアルバでない、と言っているのに、あなたはずっとアルバと呼び続けるのですね」
「私の目から見れば、お前もアルバだ」
「……そうですか。まあ、ご自由に」
アルバは手に付いたガルヴァンの崩れた右腕を払い落とし、言う。
「オルフィス教本部……分かりますよね?オリエルですよ。そこに戻って報告を。後に右腕の修復を行って下さい」
「了解した。だがシロガネは?」
「私が追います。予測ですが……首都エノクに向かったのでしょう。彼が見つける前に作戦を決行します」
アルバは来た道を戻る。
赤い目が輝き、ニクスは雲に隠れた。
執筆日 2011年10月8日
Tear-外伝 薄(ススキ) @gensolove_0104
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