殺人課の特務班に所属する『カロン』こと『朧川六文』刑事。たった三人しかいない未解決事件専門の部署で働く彼は、『不死身の肉体』と『死者と対話できる』チカラを持っていた。死神と契約して死の淵から現世へと蘇ったカロンは、迷宮入りしたはずのプロボクサー殺人事件を追う――。
『殺されても死なない刑事』や『死者の声を聞いて未解決事件に挑む』という題材の時点で、とても斬新かつワクワク感がありました。
実際に読んでいくとハードボイルドな雰囲気の中で謎めいた事件の真相を追い、更には亡者達との激しいバトル要素があるのも魅力的だと思いました。『不死身×刑事』『謎解き×バトル』といった感じで作品の柱や魅力が複数ある印象を受け、コンセプトや強みなどがハッキリしている部分はとても良かったです。
そして『バディ』のタグもあったので、部下のポッコこと沙衣とのコンビで活躍するのかな?と最初は思っていたのですが、そういう要素もありつつ、しかしどちらかというと『死神』とのタッグで戦うところが、コンビ感や渋さがあって個人的には気に入りました。
この題材・設定で色々な展開やお話を作ることができそうで、それくらい登場人物達の魅力やシッカリした土台の上に成り立っている、パワーある作品だと思います。
ただ、10万文字以下という作品のボリュームに対して、登場人物の『数』がやや多いような気もしました。仲間、協力者、怪しい容疑者、敵対者……。ひとつの事件を取り扱っている割にはネームドキャラの数や情報量が多い気がして、結果的にそれぞれの活躍シーンや印象が薄まってしまっている感じもありました。
カロンやポッコ、ケン坊やダディは外せない主軸にしつつも、裏社会の協力者や敵キャラの数は、もう少し吟味した方が良かったかなと思います。もしくは、出てくるキャラ達を読者へ強く印象付けるような要素や、物語と深く絡み合う登場・退場をさせるなどの工夫があったら、更に良かったかもしれません。
とはいえ、それぞれのキャラには独特の個性があったので、長期シリーズとして活躍させられそうなポテンシャルは確かに感じました。完結済みの1エピソードにするには収まりきらないほどの魅力が詰まっている、という言い方もできる良作だと思います。
本作は筆者の永遠のテーマである、生者と死者の関係を、これでもかと渾身の筆致で描ききった大作である。
主人公朧川六文は、とある事情から死神と契約を結び無念に死んだ犯罪被害者の迷える魂を、再び輪廻の輪に戻す仕事を請け負う事になる。
こう書くとファンタジックな内容に想えるが、本編はどこまでも五速節溢れるハードボイルド作品となっている。
筆者の代表作の1つ、いきぞこないゾンデイーを読まれた読者なら、すんなりと作品世界に没頭出来るのではないだろうか。
本作の主人公六文は、時折自嘲気味に笑う。
死ぬべき時に死ねなかった男の悲哀に満ちた背中を癒す女は、果たしてこの先現れるだろうか。
続きが気になる一作が、また生まれた。