第3話

「ミューズ・オンライン(以下、MuO)」は12の神に祝福された空に浮かぶ巨大な浮島である「ミューズ(Muse)」を舞台にしたMMORPGである。

元は地上にあった。

甞て太古の時代、神と悪魔の争いがあったが、神々の勝利に終わり悪魔は殲滅された事になっているが、悪魔はまだ存在する。

その悪魔の呪いによりミューズは空中に浮かぶ浮島となった。

太古の昔より空中に浮かんでいるが、その大陸の大きさは日本とほぼ同じ面積である。意外と大きい。

プレイヤーは、12人の何れかの神に信仰心を持つ事でMOBと戦う力を授けられる。

これはキャラメイキングの時に決められる。

MOBとは、ネトゲの専門用語であるが、単純にモンスターと思えば問題ない。

パワーが欲しい人は、12神の1人である力の神ゴルコスに信仰心を持つ事で火力重視のキャラとなる。

ただ、このMMORPGはSTRに関しては、ある程度は武器の強化で補えてしまうので、神ゴルコスに信仰心を持っているユーザーは意外と少ない。

ただし、最高の火力を求めるのであれば、神ゴルコスに信奉する必要がある。

特にソロプレイヤーで前衛職を使う者が神ゴルコスをよく選ぶ傾向にある。神ゴルコスを選ぶとSTRの補正値がかなり高めになるからだ。

一度、信仰心を持った神から、他の神に信仰心を変える事は不可能である。

慎重に決めないと後で苦労する。

「MuO」の場合、複数のアカウントを持っている者は非常に多い。少なくても3個のアカウントを持っているプレイヤーがほとんどだ。

1アカウントで3キャラまで作れるので、9キャラを扱うプレイヤーが非常に多い。

多くのキャラを持つのは単純に月額無料だからだ。

フィールドやダンジョンには、何れかの神の像が必ず置かれているので、祈る事で神に祝福され冒険が有利になる。

祝福される時間は30分だが、祝福されている間は一回攻撃が二度ヒットする。

多少、レベルが低くても攻撃が二度もヒットするので、高火力の攻撃が可能である。

神像があれば、多少の背伸びしたダンジョンに籠もる事も可能である。

ただし、祝福される時間は30分なので、あまり調子にのると後で酷い目にあう事になるので気をつけないといけない。

悪魔側にも同じように邪神像に祈る事で同様の力を得る事が可能だ。

MuOのプレイヤーの最大の目的は、この浮島である「ミューズ」を地上に戻す事がその使命である。

そして、光があれば影があるように、神がいれば悪魔もいる。

このゲームは悪魔に信仰心を持つ事も可能である。ダンジョンのボス部屋の前には、たいてい悪魔の邪神像が置かれている。

神像、邪神像が無い場所は、MuO最強のボスである「バハムート」がいる「カユウ山」のダンジョンぐらいだ。

ボス戦を目的としたパーティーを作る場合、ダーク・ナイトはモテモテである。

神に信仰心を持った場合、ランダムで属性が付与されるが、悪魔に信仰心を持った者は全て闇属性となる。

火属性は風属性に弱いなど、属性が重要になってくるが、闇属性は属性による弱点が一切無い。

神の属性である光の属性より、悪魔の闇の属性の方が強力なのである。

明菜はダーク・ナイトなので悪魔に信仰心を持っているキャラクターとなる。

悪魔側だが、ダーク・ナイトは火力も防御力も他の職より秀でいているので、人気職業の一つであり特に女性からの支持が最も大きい。

なぜなら、公式のイラストに書かれているダーク・ナイトの男性キャラがあまりにもカッコ良すぎる為である。

特に腐り気味の女子に人気がある。

神側にもイケメンは存在する。

知の神アールスバイドである。主にウィザードが信奉する神だが、同人誌即売会ではダーク・ナイトと知の神アールスバイドの二人のラブな漫画が腐女子によって書かれ、腐女子によってバカ売れしている。

「ハニハニカフェ」には、同人誌作家のお嬢様がよく来店する。

有名な作家はサインを「ハニハニカフェ」に残している。現在のところ、6名の同人作家がサインを残しているがプロになった作家もいるので、このサインはファンの間では「神の落とし物」と呼ばれている。

絵も何人か残しており、ダーク・ナイトとアッキーの似顔絵が描かれている。イラストもツインテールなので、見ればどの店員が描かれてるのはすぐに分かる。

「ハニハニカフェ」の店長兼オーナーの立花美里は、この絵を「オクに出したら、いくらになるかな?」とすら言っている。

世界に一枚しかないサインとイラストなので、額に入れて飾ってある。

そして、その作家はサインを書く代わりにアッキーとの2ショット写真を撮影させて貰っている。その時、ゴツい高価な眼レフを必ず持ってくる。

その腐女子なお嬢様は、電気街で同人誌を書い、帰りに「ハニハニカフェ」に一息ついてから自宅へ帰るのである。

もうこれがルーティンになっている同人誌作家が非常に多い。

明菜がダーク・ナイトなのは、単にソロプレイヤーなので、初期のJOBをダーク・ナイトになれるダーク・ファイターを選んだに過ぎない。特に腐っている訳ではない。

イラストを見た時の感想は「へぇー」である。

ちなみに明菜は男性と付き合った事がない。単に興味がないだけである。

悪魔側の人気職業に忍者というJOBもあるが、闇に生きる職業なので、悪魔に信仰心を持つ事が絶対条件である。

忍者は素早く、火力があるので人気職業の一つである。ただ、悪魔側唯一の隠しJOBである。

長い転職クエストを攻略して初めて忍者になる事が出来る。レベルは50以上である事が隠しクエストを行える条件である。

ただし、相当難しい転職クエストをクリアしないと転職が不可能なので、Lv.50では忍者になるのはかなり難しい。

基本、神側はステータスのバランスに優れ、悪魔側はステータスの何かに特化する傾向にある。

ステータスには、STR(腕力)、CON(体力)、DEX(器用)、AGI(敏捷)、INT(知能)、SPR(精神)があり、好きにステ振りをしても構わない。

レベルが上がるとスキルポイントを3ポイント付与される。

その3ポイントをステータスに振るのである。

ただし、一度振ってしまったステータスを通常の方法で初期化する事は不可能である。

ステータス初期化が出来る課金アイテムを購入する必要があった。

通常販売がされていなく、いつ発売されるかわからないので、ステ振りに関しては様々な意見がでている。

スキル初期化アイテムは転売屋が大量にステリセのアイテムを買い込んで、高額で転売しているユーザーがいるが高いので全く売れない。

買う方も相場は知っているのである。それか、余程ステ振りに深刻な失敗をした者しか買う事はない。

そして、そのステリセのアイテムの価格は、リアルマネーで550円とMuOの課金アイテムにしては値段が異様に高い。

クジが1回150円だからだ。

JOB、人によりステ振りには自由度があるのだが、「MuO」は余りにも自由過ぎた。正解というステ振りがこのゲームには存在しない。

AGIの高い忍者は、そう簡単にはMOBの攻撃は当たらない。回避する事が多い。このゲームでは高レベルの忍者のステータスはSTR、AGIを同程度に振るので、動きが素早く火力のある職業となる。

忍者のステ振りの主流は、STR=AGIというステ振りが流行している。ただ、忍術が使えるので、ある程度は知力、精神に振る必要がある。

更に忍術はMPを消費するのでMPを上げてくれるSPRも必要だが、SPRを上げているプレイヤーはあまり存在しない。

その為、忍術の使い過ぎでMPが枯渇する事がある。

ただ、忍者はCONにはステータスポイントを振らないので、HPが少ない。強力なボス戦の場合、パーティー戦では真っ先に死ぬ可能性がある。

ボスの攻撃の一発は大きいからだ。ただ、CONにステータスを振れば体力とSPは上がるが、火力に劣る。ステ振りに正解を見いだせない上級者向けの職業である。

そして、神は12人いるが、悪魔は1人だけである。悪魔の名は「ネフィス」と言う。強大な力を持った大悪魔とされている。

これまたイケメンな悪魔である。

ゲームでは神側のキャラと悪魔側のキャラで勢力争いをしていた。

その為、PvPが可能であった。

GvGも実装されていたが、死ねばPvPでもGvGでもデスペナルティは受ける。

PvPとはプレイヤーVSプレイヤーの意味で個人戦だ。

GvGはギルドVSギルドなので、団体戦である。

「MuO」では装備を無くす可能性があるので、PvP、GvGはあまり行われていなかった。

ただし、神側勢力がPvPやGvGで他のプレイヤーを倒した時には、否が応でもレッドネームになるが、悪魔側は他プレイヤーを倒してもペナルティーは一切無い。

レッドネームとはPvPまたはGvGで、敵であるプレイヤーを倒したという意味である。

レッドネームからグリーンネームに戻すには、「神々の祝福」というクエストをクリアする必要があった。

このクエストは何処の街でも受ける事が可能である。街であれば町長、村の村長などその拠点の有力者から受ける事が可能だ。

クエストを受けるのが面倒な場合は、3日間レッドネームで過ごす事である。

ただし、レッドネームの間は神像からの神々の祝福を受ける事は出来ない。

「神の祝福」の攻略マップは小さいが、難度の高いクエストの上にMOBがアイテムをドロップする事もない。そして、ボスが強すぎるのである。

パーティーを組まないとまずクリアは不可能である。この時、レッドネームとグリーンネームが一緒にパーティーを組んでも構わない。

ソロプレイヤーは相当苦労する事になる。シャウトでパーティーメンバーを募集してもあまり助ける人は少ない。その為、ギルドの方針でPvPもGvGにも参加しないギルドが多い。

だが、PvP、GvGをメインとしたギルドも存在する。

こうなると悪魔を信仰する方が得に思えるが、神側の方が最初に選べる職業は多岐にわたっており、隠し職業まで習得する事が可能である。

そして、悪魔側の初期キャラクターは、ダーク・ファイター、ダーク・プリースト、ダーク・ウィザードの3種類からしか選べない。

そこから派生する職業も、現在のところ僅か4種類である。隠し職業は忍者の1種類のみである。

悪魔側で遠距離攻撃が可能なのは、ダーク・ウィザードから派生する職業のみだった。

神側には遠距離攻撃を得意とするアーチャーが存在する。

このMuOが大人気なのは、神と悪魔のバランスが丁度よく保たれている事である。

女性プレイヤーから圧倒的な支持があるダーク・ナイトが非常に多い為である。

高火力に防御力があまりにも固い。そして、単体攻撃から全体攻撃による強力な攻撃スキルを覚える事が可能だ。

まさに悪魔である。ただ、色々とスキルが選べるキャラなので、器用貧乏になる傾向がある。

単体スキルを選ぶか?全体スキルを覚えるか?で悩んでしまう。

当然、スキルリセットは出来ない。ゲームとしての「MuO」でもスキルリセットのアイテムは販売された事は、この5年の間に一度も無かった。

神側のナイトの上級職であるクルセイダーはタンクとされる事が非常に多いが、悪魔側のダーク・ナイトは立派な前衛である。

タンクとはパーティの盾にされる前衛キャラである。

その為、神側のクルセイダーはステ振りではCON:DEXを同時に上げる傾向にある。

DEXを上げた方が、クリティカルか出やすいのである。

そして、STRは武器の強化やアクセサリーの強化で補完が可能なので、STRにはあまり振る必要はない。

多少、複雑だが慣れてしまえば簡単なのが、「MuO」の人気がある理由である。

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ミューズ・オンライン 男爵芋 @danshakuimo

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