第4話 三角関係?
僕は本当にバカだ。自分で言うのもなんだが、勉強は人並みにできるので、そういうバカじゃあない。
興味があることでも縁がなければ経験と知識はついてこない。しかしだからと言ってすぐに経験豊富になる方法はない。あることにはあるが人間性を欠く。
明日は一ノ瀬と会う日だ。
今日のことは、いや今までのこと一切合切忘れよう。僕はフラれたんだ。
自室の灯りを保安灯のみに切り替え薄明るい暗闇を作り出すと、現実逃避するかのように、眠りに入った。
朝から肌寒い。やる気が起きない。
かといって暖かいと気持ちが良くて二度寝してしまうので安全性は秋冬の方が高い。
僕は大事な日には朝ごはんを少量に抑える。
そもそも少食なのもあるが、食べ過ぎて体調を崩すことだけは避けたいという思いが、食欲を上回る。これは決して冷静なわけではなく、食欲とは別の我欲が強いだけである。
食事を終えるとさっさと家を出た。
待ち合わせ場所には僕の方が早く着き、その十分後には一ノ瀬と会うことができた。
晴天の下、僕たちは無計画で街を徘徊する。
随分と細い道に入ってきた。都会に高く聳えるビルの数々が壁となって僕たちを挟む。狭い空間で体が密着してしまいそうだ。
「ねぇ、平本。好きな人できた?」
唐突なその質問に、しどろもどろした挙句、僕は正直に「うん」と答えてしまった。
「ならさ」
こちらとしては結構大きな暴露をしたつもりだったが、特に応える事も驚くこともなく会話を続ける一ノ瀬に、僕は謎の相づちを何度かする。すると一ノ瀬は立ち止まってこう告げた。
「もう会うのやめよう」
僕は理解が追いつかなかった。
誰もいない道。しっかりと影のできた路地に立ち尽くす僕ら。
「天使そらさんに誤解されてるよ」
「な、なんで? あ、あのー、あ、天使さんのことを?」
「三角関係みたいになっちゃうでしょ?」
この人は僕をからかうというか、良い意味で操作してくるのが上手い。SかMかで言ったら確実にSだが、そこに優しさが兼ね備わってくると僕のどストライクゾーンである。
そして今まさに一ノ瀬は、僕の質問を真っ向から無視し、話を本筋に戻した。
「三角関係って僕と、一ノ瀬と、天使さんの?」
「そ。ってことで会うのは今日が最後」
結局一ノ瀬が天使そらを知っている理由は教えてもらえなかったが、後日僕は、このことにもう一人の人物が絡んでいたことを知る。
恋を知らなかった僕を殴りたい 変太郎 @uchu
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