第3話 真実
私、天使そらは、恋をした。
相手は、クラスで二番目くらいに高身長で、勉強はそこそこできるけど、運動は駄目だった。席は残念ながら近くはない。でも、同じ教室に、同じ部屋の中に居られる。それが立派なモチベーションとなっていた。
関係ないが、最近"アイ"という歌手が話題になっている。
まあ恋愛、もっと詳しく言えば失恋系の曲が多いので、関係ないこともないと言える。
あまり流行を機にするタイプではない私も、自分に合ったものは当然好む。
この場合流行と好みが合っているので、流行気にしてない風にして隠れてめちゃくちゃ聴いてる。
とても共感できる。けど、少し違う。自分とは。
好きな人と両想いなのに自分から振るなんて。そんな歌詞あるわけない。
本当は大好きなんだけど。というかそれも伝えたようなものだけど。
なんか本能が喜んでない。
それがなんなのか。その答えは、図らずもアイによって伝えられることになった。
まさか、正体不明、顔出しNGの謎に包まれた歌手「アイ」の正体が自分と同じ中学二年生だったなんて。
何故私が謎を暴くことができたか。それは本人によって伝えられたからだ。即ち私の力で暴いたわけではない。
でも本人から直接連絡が来るなんて。私個人に声を聴かせてくれるなんて。今でも夢だったのでは、と思っている。
そんな幻想を現実と思わせたのは話の内容だった。
問題の内容は、まるで私のことを何処かで見ているのではないかと思ってしまうほど、プライベートな情報から成っていた。"見ていた"という一つの可能性を除き、考えられるのはSNS。といってもインスタグラムの類を利用していない私が使っていると言えるアプリはLINEのみ。そしてタイムラインという可能性もない。友達しか見れない設定にしてるから。となると考えられるのは一つ。トーク。中でも個人チャット。こちゃと称されるそれは、相手が誰かによって心地が大きく変わる。
私が心置きなく、良くも悪くも全てをさらけ出してしまう相手。
それは私にとっての神。神にさえ思えるほど、夢中になってしまうその相手こそ、私のプライベートを晒した悪人と言える。平本影人。私が崇めるのは極々平凡な、男らしくない男の子。こんなこと、誰にも言えないけど、私は密かに宗教に属している。私はたった一人の、平本教の教徒。隠れ「ヒラモタン」だ!
「私は平本くんのことが好きだった。今は違うから安心して。今の私にとって平本くんは商売道具。自分でも信じられないほど酷いことを言ってるのはわかってる。でも、忘れるために。私がこんな有名になれたのは平本くんとの思い出があったから。私はもう十分幸せだから、あなたが平本くんと幸せになって。勝手に長々と話してごめんね。会ったことすらないのにね」
これが「アイ」。本名
私は何が何だかわからなくて、今は部屋の隅にいる。
今一番の不安は、一周回って、個人情報が流出していないかどうかだった。
人間はよくわからないタイミングで意外と重要なことを思い出したりする未完成な生命体だ。
(なんでアイさんが平本くんのこと……?)
今一繋がりが見えてこないため、SNSなど誰にでも見られるようなところに書き込んだために、色々漏れたのではないかと思った。
それが杞憂だったことがことがわかったのは、通学中に秋を感じられるようになってからだった。
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