サイレンなんかじゃない
鳴田るな
預かり物屋へようこそ
ちりんちりんと呼び鈴が鳴りました。お客様がやってくる音です!
カウンターですやすや気持ちよく船を漕いでいたけど、慌てて居住まいを正します。
起き上がった拍子、ガタンと肘を打ち付けたのがちょっと痛い。咳払いして営業スマイルを浮かべたのと、扉が開いたのはほとんど同時。
今度のお客様は綺麗な女の子でした。年の頃は16~18歳ぐらいでしょうか? 身長は自分と同じぐらい、色白だと白いワンピースがよく映える。長い銀髪は綺麗に編み込まれていて、可愛いリボンで彩られています。
下を向いていた青い瞳が、少しさまよってからようやくこちらを向きました。
「いらっしゃいませ。預かり物屋へようこそ!」
カウンターから呼びかけると、一瞬躊躇したような顔をしてから、そっと歩いてきます。
「あの……ここが、何でも預かってくださるお店……ですか?」
「ええ、そうですよ。何か、預けたい物がございますか?」
すらすらと説明の口上を述べると、女の子は少し考えてから、また青い目をこちらに向けました。
「私の歌を、預かってほしいんです」
――どこかで波の音が聞こえたような、そんな気が、しました。
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