禅問堂

安良巻祐介

 

 近所のずっと空き地だった区画に禅問堂という建物が建ったというので見に行ったところ、建物などは何処にも見えず、ただ以前と変わり映えのしない空き地の、名も知れぬ草のまばらに生えたその真ん中に、襤褸を体に巻き付けた禿頭の男が一人、正面を向いて立っているきりだった。その男に禅問堂のことを聞こうと近づいていくと、だんだんとその男の立っている雰囲気や表情の具合がはっきりしてきて、その異様さに背中がぞっと寒くなって、ただ「ああ、これが禅問堂なのだ」と辛うじて理解できたきりで、その後その空き地には二度と近づいていない。

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禅問堂 安良巻祐介 @aramaki88

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