鬼神の現世旅路録

藤宮 結人

第1話 ミステイクな召還にて


力ある者、弱き者を助ける。

この世の自然の掟である「弱肉強食」に聞こえだけは似ているものの、その本質は全く異なる。

普通は人間とは弱い生き物であり、個々の力には限りがある。

だから自分より強い者には恐怖するしかなく、周りが見えなくなる。

まして他人を守る余裕なんて自己防衛機能の前では塵と化す。


つまり言いたいことをまとめると、


「自分より他人を助けられる人は人間ではない」ということ。


「人間ではない」。

この表現を補足すると「自分の命すらも顧みない」ことを指す。

例を挙げるのならば伝記に描かれる勇者や魔法使い、近いとこでは両親。

何にせよ他人を守るために戦っている人に違いない。







ーーー1



気付いたらもう違う場所にいた。

唐突のことでありえない事象を理解するには時間がかかる。

まずは1つずつ「ここ」に来る前のことを思い出してみる。



・・・・・・・確か、ロタと一緒に晩御飯となるギガンベアーを狩ろうとして愛剣の「呪詛真刀」を首元目掛けて振り上げたのは覚えてる。

でもそこから謎の光が飛び込んで来て、



目を開けたら「辺り一面に人間がいて、しかも太陽が昇ってる」



目をこすってもこすっても現状は変わらない。

さっきは夕暮れ時だったはずなのに今は昼過ぎくらい。

色々と不思議なことがあって納得できない。


生憎、周りにはこの状況を聞くのに適した人材がたくさんいる。

が、ひとまずは目の前にいる巫女衣装の女の子に話を聞いてみよう。


「あーの、すいませんけ!!!????・・・・ん??????」



・・・・・・

・・・・・・・・・あれ、おかしいな。

声がかわいい。

本来なら渋みがあり、深みがある低いトーンの声が出るはず。

それにさっきから気にはなっていたけど、「見える視野が低い」。

まるで人間の女児みたいだ。


手を握る、足の運動でぶらぶらさせる。

・・・・・・・・小さい。手も足も小さすぎる。


「・・・・・どういうこと?」


「最強の鬼神でおられる悠忌様にお越し頂けたこと、大変ありがたいことと存じます」


「うん、そう。我は最強の鬼神であり魔王クデアを倒した気高き者」


「はい!、それはもう。何せ幼い時から母から読み聞かせられていました」



「じゃあ何でこんな姿でここにいるのか具体的に申してもらいましょうか!?」


一言一句言えた。

謎の達成感が押し寄せ若干顔はドヤ顔気味。

だが、内心は不安でいっぱい。

今、目の前の少女に指した自分の人差し指は震えている。


数秒の沈黙は大衆の驚嘆。

彼らもまたこのようなかわいい者がでかい態度を対面早々見せるとは思っていなかっただろう・・・ただ一人を除いては。



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