二度めのラブレター

私は考えていた。

どうやって遊佐君にラブレターの真実を話そうか、と。

でも、私が遊佐君の教室まで行って彼を呼び出したりしたら、きっと遊佐君は周りの人から変な目で見られてしまう。

私なんかと関わると、きっと変な噂を流されてしまうだろうし……。

「はぁ……」

放課後。

私はいつものように玄関へ向かおうとした。

だが、その時。

「美月」

「え……」

前方から遊佐君の姿が見えたかと思ったら、私に手を振りこっちに向かってくる。

「っ」

私はくるりと踵を返すと、そのまま遊佐君から逃げるように走る。

「ちょっと待って」

「っ」

私は運動神経がいいわけでもない。

だからもちろんどんなに全力で走ったって逃げきれるわけがない。

そんなことわかっているのに、頭の中ではわかっているのに……。

「捕まえた、」

「うわ、」

腕を掴まれ、私の足が止まった。

「す、すみません。急いでるので」

「帰るなら逆方向じゃない?」

「……」

遊佐君はもし誰かに見られていたら……とか考えないのだろうか。

私は誰かが見てたら……と思うと、怖くて顔を上げられなかった。

と。

「おい、何してんの」

「あ、京。今、この子と話したくて」

「……」

何故か知らない男の子も現れた。

どうやら遊佐君の友人らしい。

遊佐君の友人の彼は私をじっと見つめる。

「……」

「園田美月、じゃん」

「え!?」

なんで私の名前を?

私は、バクバクうるさい心臓を静めるようにして、

「なんで……」

そう呟いた時。

「だって同じクラスでしょ」

そう言って、遊佐君の友人は笑った。

「ええ!」

「まさか同じクラスの人の顔も覚えてないわけ?」

「……」

私は同じクラスの人の顔も覚えていないことに対して、すごく失礼なことをしてしまったと思い、

「ごめんなさい……」

謝った。

と。

「まぁいいけど。俺は京っていうから。で、お前らどういう関係?」

「……」

京君は私と遊佐君に、交互に視線を向ける。

「いや、どういうって聞かれても……。俺はちょっと美月に用があって引きとめただけだよ」

「……用?」

京君は、私と遊佐君がそもそもどうして知り合いなのか気になるようだ。

でも遊佐君は詳しく話そうとはしなかった。

「ま、いいけど。じゃあ俺、先に帰るわ」

「うん、ごめん」

京君は私と遊佐君の前から去っていく。

「引きとめてごめんね」

「あ、いえ……」

「これなんだけど」

「え?」

遊佐君が見せてきたのはラブレター。

この間と同じように匿名で、でも前回とは封筒が違う。

もしかして……。

ドクドクと脈打つ鼓動。

「また入ってたんだけど」

「えっ」

「これ……。字とか書き方とか同じだから同じ人でしょ」

「……」

「これさ、美月が… ─ 」

「えっと……そ、それは」

 ─ 私が書いたものじゃない。

そう言おうとした時、

「遊佐君!! 委員会はー?」

「あ、ごめん、今行く」

知らない女の子が教室から顔を出し、遊佐君にそう言った。

遊佐君はすぐにそのラブレターを鞄にしまって、

「嬉しかった。ありがとう」

「……え、」

綺麗すぎる笑顔を見せてそのまま去ってしまった。

私は、その背中を見つめることしかできなかった。


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