“社”の石段を登り、八白さんにプレゼンをしに行こう。

 この物語は、強い力をその身に秘めたる妖狐の八白と、好奇心が強い男子高校生の神谷結が、世間を騒がせる怪異を解決していく話……というのは表面をなぞっただけの説明である。
 彼らが行うのは、人助けであって、人助けではない。自分達の目的があり、それを果たそうとするがゆえに善行を積むのである。八白は、人を深く知るため。神谷結は、八白を深く知るため。それぞれの思惑が混じり合い、時としてすれ違い、物語は進展していく。
 この物語で最も評価できるのが、妙な誤魔化しやご都合主義で済ませずに、何事にも腑に落ちる理由をつけて読者を納得させる点である。何か行動を起こすならば必ず動機があり、成功や失敗があったならば相応の理由がある、といった事を、短すぎず長すぎず、適切に物語に織り込んでいる。
 筆者曰く『リアリティとは、現実味ではなく納得感である』との事であるが、正にその持論を貫き通した一品であり、ただただ、この物語はなるべくしてこのようになっている、と納得し通しであった。