『扉をあけるな』とそう書かれていたに違いないとはじめは推測した。

 一階にたどり着き、館から外に出た。雨が上がり星空が見えていた。

 持ってきたリュックの中身もほとんど使ってしまい、三人は学校の校庭から帰路に向かった。


 家に帰ったはじめは、巨大蜘蛛に巻かれていた『赤いリボン』のことをずっと考えていた。

 夜、はじめは、あの家でのできごとを夢でみた。それは、ゆりが誕生日におじいさんから赤いリボンをプレゼントされ、光景は目の当たりにしたものだった。

 しばらくあの館に行かなかったことの本当の理由を、自分の心に封印しているように思えた。

 翌日、はじめは、タキザキにあの館のことを話した。

 タキザキも大きな箱の中身のことを、柿谷を混じえて語った。

「あの中には、大人の白骨の死体があった。たぶん、あの館の主人だと思う」

 意気揚々とした顔で、タキザキは続けて話した。

「それにしても、大クモに襲われた時は肝が据わったぜ!」

「よく言うよ。『もう、ダメだー』って言ったのは誰なのさ」

 柿谷がいった。弁解するようにタキザキが返答した。

「ああなったら、誰だって言うセリフってあるだろっ! しかし、ホントラッキーだったな。あの大クモが号令かけてくれなかったら、あのクモの餌にされてたんだから」

「そうだよな。もうダメかと思ったけど、はじめ、なんであのクモ、おれたちを見逃してくれたんだろうな」

「前に話しただろ、あのクモはおそらく、館にいた『ゆり』って女の子だよ」

「女の子?」

「脚にリボンが巻き付いてただろ。俺、あのリボンに見覚えがあったんだ! 間違いない。ふたりとも、感謝しろよ! 俺がいたから助かったようなもンだぜ!」

「感謝してますとも、はじめ大明神サマ!」

 茶化すようにタキザキがいった。


 一学期の終業式が終わり、はじめは母方の実家へと引っ越すことになった。もうあの館に行くことはその後なくなった。


                          完

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Don’t open it!(それを開けてはいけない!) 芝樹 享 @sibaki2017

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