世界の創世神話から始まる一作。神話によれば、「唯一の者」によって世界は拓かれた。そして「唯一の者」の涙によって、三匹の龍が生れ落ちた。その龍たちの求めに応じ、「唯一の者」は世界を作り、龍たちに探索を頼んだ。一匹の龍は太陽から地上に戻り、一匹の龍は知恵によって海の底を隆起させ、もう一匹の龍は、海の底を一息で潜った。三匹の龍にはそれぞれの働きに由来する名前が付けられた。そんな神話を信じ、龍を崇めながら暮らしている民族がいた。海の民である人々だ。
主人公は女性言語学者。彼女はアルマナイマという星に生きる、海の民族と交流を持っていた。彼女はその民族に伝わる成人の儀式を受けることによって、民族に受け入れられていた。特に、破格の体躯を持つ青年とは、仲良くやっていた。青年は船に乗り、主人公に海に浮かんだ一匹の龍の死骸を見せる。丈夫なはずの龍が、首に何かで一撃され、死んでいた。死因を詳しく調べるため、船で曳いていると、この星にないはずのモーターボートに乗った人物により、銃で狙撃される。
そして主人公は、ある人物から銃口を突き付けられ、信じられないことを命令されるのだが……。そんな主人公を助けたのは、意外な存在だった。
果たして、モーターボートに乗っていたのは?
主人公を狙撃した意外な人物とは?
無文字社会で言語も価値観も違う異民族同士の、心の交流を描く、今までになかったエスニックな作品。創世神話の綻びに、世界はどう答えるのか? すべての伏線が回収されたとき、驚愕の計画が明かされる。
神話や民族が好きな方には、必見の御作。
是非、御一読下さい。