決意
村に戻るとババはいなかった。
いや、回収されたという方が正しいだろう。釜の中には研ぎかけのお米が残ったままだった。
ほんの少し前の出来事が夢を見ていたようにぼんやりしている。しかし現実逃避したくてもボクの体は鬼のままだ。
ジジやババと過ごした記憶はしっかり残っている。背が伸びるたびに刻まれた柱のキズがとても懐かしい。これもすべて物語の一つだったのか・・・。この悲劇が全国で繰り返される・・・。人に悪いことをしていない鬼がボクに何匹も殺されていく。そんな理不尽があっていいのか?ボクの心が鬼に宿ったのは・・・運命なのか?あいつこそ本当の鬼なんじゃないのか?
「ジジ、ババ、桃太郎、鬼たち・・・、ボクはこんな悲しい物語が許せない!この物語をボクが終わらせる!本当の鬼を・・・倒す!」
鬼は静かな声の中に怒気を込め言葉を吐き出し、ポタポタと血が滴るほど拳を握りしめていた。
ボクの本当の鬼退治が、今、始まる。
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