かつて一緒にいろんなRPGをプレイした幼馴染が、記憶喪失になってしまった。
思い出のゲームを再プレイすることで、十数年ぶりに再会した彼女の記憶を取り戻そうとする、一風変わったラブストーリーです。
兎にも角にも、実在のゲームと物語のリンクの仕方が見事。
あのセリフやあの名曲が、登場人物たちの心境を盛り立てます。
ゲームの中でも現実でも、戦わなければならない敵が存在します。
一人では勝てない相手でも、信頼できる仲間や強力な武器があれば、勇気を持って立ち向かえるのですね。
目次の小見出しに並ぶタイトルを見て心躍った人は、すぐに読むべし!
懐かしのRPGの思い出が、夢中で遊んだあの頃の気持ちに深く刺さること間違いなしです。
無気力なその日暮らしを送るフリーター、水無瀬錦。
昔は、勉強がよくできて、ゲームでも要領がよくて、
年上の幼なじみである響子からも頼られるくらいで。
ただ、思い切りが足りないという欠点は、昔からだ。
錦は、一緒にゲームをプレイする響子が好きだった。
でも、初恋は、何も言えないまま途切れてしまった。
そんなほろ苦い思い出が、意外な形で再び動き出す。
ばらばらになった響子のかけらを集める旅が始まる。
作中では、実在するゲームとそれにまつわる思い出、
そして錦と響子の現在がリンクして、話が進行する。
私は錦たちとドンピシャ同世代という訳ではないが、
RPGあるあるな雰囲気とか感触とかメッチャわかる!
DQ、FF、聖剣といった名作を年代順にプレイして、
ストーリーやシステム、キャラクターを鏡とすれば、
そこに映る自分の姿が次第にはっきりと見えてくる。
響子の「成長」と共に、錦もまた変わり始めて──。
すーっと染み込んでくるみたいな柔らかな語り口が、
錦の人柄をそのまま表現しているように感じられる。
あちこちに愛着あふれる実感が込められていました。
連載が終わってしまい、ホッとしつつも寂しいです。