友達

 夕暮れの商店街。

晩御飯の買い出しや帰宅する学生達で辺りは賑わい、路地の哀れな霊には目も向けない。

そこへ仲良しそうな3人の女子生徒達が通りかかる。

「そう、ここだよ。ここがあの噂の路地!」

おかっぱ頭の女子生徒がこちらを指差して言った。

「ここがねぇ、確かにそれっぽい雰囲気あるけどさ。どうせ嘘だよ」

三つ編みのお下げをした女子生徒が、ないない、と手を振った。


「でもさ、もしかしたら本当かもヨ?」


いたずらっぽく笑った女子生徒を見て、霊は目を見開いた。

前髪は真っ直ぐ切り揃えられ、癖っ毛をハーフアップにした瓶底眼鏡の女子生徒が立っていたのだ。

その女子生徒は霊の姿に気づいたのか、一瞬驚いた顔をしたがすぐに笑顔に変わった。その表情はまるで霊を嘲笑っているかのようだった。

 通学路を談笑しながら歩き去る自分の肉体。

あの肉体が親しくしているのは、こうなる以前に友達になりたかった人たち。声を掛けようとしてあと一歩踏み出せなかったクラスメイトだ。

ほんの少し、勇気を持っていたら。

こんな噂を真に受けず、こんな事に勇気を出す自分の力で掴めていたら。


私の物語はここで終わりじゃなかったのに。

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一つのネガイ 柊 撫子 @nadsiko

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