第27話 帰還
みどりは気がつくと、道の真ん中に立っていた。そこは、あのみどりが魔界に来る前に探していた雑貨屋の店の前だった。みどりは振り返ってたった今出て来たばかりの領事館を見出そうと、雑貨屋をよくよく見た。しかし、それはどう見ても小さな手作り雑貨の店のコンクリートの建物だった。
みどりは自分が何をすべきなのかわかっていた。中に入って、エミちゃんの欲しがっていた筆入れを買った。そして店を出て来たのだが、店は中も領事館とはかけ離れた店だった。領事館は、みどりに対して開けている時と閉じている時があるらしい。
みどりは歩いて家に帰ったが、帰るのが遅くなった。母は
「遅いじゃないの、どこ言ってたの、今何時だと思ってるの」
と言ってみどりを叱った。こんなに帰るのが遅くなったことを心配してくれる家族は一人もいなかった。
みどりは次の日学校に行き家に帰り、また学校に行くという日々を送った。みどりは時々、ぼーっとしてしまうことが度々あった。話聞いているの?と筆入れを手に入れたエミちゃんがよく聞いた。その度にみどりはうん、と曖昧な返事をするのだった。
あれは夢だったんだろうか、と思ってしまう日が時々ある。そんな日は、みどりは自分のおさげのヘアゴムを触ってみる。そして、ハートがないこと、代わりに花の飾りがついていることを確かめる。今つけているヘアゴムは、魔界の横丁でレオンが買ったものだ。前のハートの方を一つ壊してしまったことのお詫びにと、二つセットで買ってくれた。みどりは今はそれをつけ、ハートの方は机の引き出しにしまい込んである。時々、ハートの方は一つしかないことを確認しに机まで歩くこともあった。
ある日のことだった。家のベルがピンポンと鳴った。家が留守だったのでみどりが出ると、そこにはなんとすみれがいた。すみれは勢い込んだ様子で言った。
「あれから、すべてのことが夢のようで信じられなくなったの。みどりちゃん、夕顔町に住んでるって言ってたから、住所電話帳で調べて、来ちゃった。」
それからみどりとすみれは勢いよく話し続けた。魔界であったこと、その冒険の様々な詳細をだ。二人はやはり魔界が本当にあることを確認すると、すみれが口を開いた。
「ねえ、もう一回、領事館が開いていないか確かめに行って見ない?」
みどりはすぐに支度を整えて、外に出た。
みどりの冒険 オレンジ @76-n
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