05

 どうも。阿須賀あすか天音あまねです。

 今日は幼馴染の夏音カノンさんに誘われて、とある二次元アイドルユニットの、初ライブに来ています。

 何やらチケットが余ってしまったとのことで、決してお安くはないお値段ではありましたが、折角の夏音さんからのお誘いでしたので、参戦させて頂いた次第です。

 

 私の他にも、夏音さんの級友さんと従兄殿もご一緒です。

 お二人ともゲームで少し交流がありましたが、実際にお会いしたのは今日が初めてです。

 級友さんはゲームがクソお上手ですので、『廃人さん』と尊敬の念を込めてお呼びしているのですが、固辞されてしまっています。まぁ呼び方変えませんけど。

 従兄殿もゲームは勿論、お料理も得意だそうで、ご挨拶代わりに頂いたクッキーがステンドグラス風と、女子力の高さに脱帽です。


 ライブ会場は地元からは遠くでしたので、夏音さんのご両親が引率して下さいました。お母様はいつも賑やかで、大変楽しい変わったお方です。お父様も一見寡黙で穏やかインテリヤクザ風ですが、話してみるとユーモラスな一面もあり、夏音さんの原点を感じます。

 笑えるほど夏音さんの身内しかいない状況ですが、臆する事なくご一緒におられる廃人さんは、ある意味凄いと感心いたします。

 今回のライブは、元々は夏音さんと廃人さんが行きたかったそうで、チケット争奪戦に挑んだ結果、二人ともチケットを手に出来た為に、私と従兄殿に白羽の矢が立ったようです。ま、学校の方をお誘いしたら、あらぬ噂が方々に広がるでしょうし。


 従兄殿は用事があるとの事で、現地で集合されることになっておりました。私達は物販にも並びたかったので、午前中から会場入りです。

 午後一からの販売開始でしたが、早めに並んだ方が確実にお目当ての物をゲット出来ますので、頑張りました。えぇ、頑張りましたとも。

 眠い目を擦りつつ早起きし、2時間ほど電車に揺られ、肌寒い中をさらに2時間並びました。三人で並んでいたので、待ち時間にゲームをしつつ交流を深めたり、夏音さんと廃人さんのご様子に色々と思うことがあったり。

 お父様とお母様の後方支援を受けつつ、戦利品を無事に獲得した頃には、すっかり昼食の時間になっておりました。

 夏音さんは、この日のためにとお年玉を温存していたようで、正直ドン引きする程の買いっぷりでした。諭吉さんと一葉さん、野口さんと笑顔でお別れをしている様子は、横で見ていていっそ清々しかったです。

 廃人さんは対照的に、厳選に厳選を重ねたラインナップで、お二人の性格の差が伺えます。


 その後、ショッピングモールに併設されたフードコートでお昼ご飯を済ませ、皆さんで談笑しておりました。ふと目をやると、夏音さんと廃人さんが、おもむろに戦利品のライブ限定ジャケットを取り出していたので、そのまま見守っておりました。

 お揃いのジャケットを着こむお二人。私は今回はそちらの購入は見合わせたので、ぼっちフレンズです。

 お父様もその一部始終を見つめており、人の悪い笑みを浮かべております。

 お母様は私と歓談しておりましたので、最初は気が付いていないようでした。が、しばらくして、私の何とも言えない表情に気が付いたのか、夏音さんの方に目を向けました。その瞬間の表情と言ったら。

 えぇ、分かりますお母様。

 きっと、私と同じ気持ちですね。


 ライブが始まるまでの時間潰しに、会場近くのショッピングモールを皆さんとぶらぶら見て回りました。ゲームセンターに行ったり、多趣味な商品を取り扱うお店に入ったり。

 気が付けば、夏音さんと廃人さんが、懐かしいアニメキャラクターの商品を見ながら談笑しておりました。その様子は、控えめに言ってもただのカップルです。

 ペアルックで並んで歩く様子をカップルと呼ばないのだとしたら、それは一体何なのでしょう。

「……ペアルックですねぇ」

 ふと、お父様が小声で呟きましたので、

「リア充は、爆発すればよろしいかと」

 とお答えしてしまいました。

 それよりもお父様。良いのですか。公認なのですか。

 普通は壁になったり意固地になったりするものかと思うのですが。




 夏音さんから「同じクラスで同じ係っていうだけなのに、あらぬ噂を立てられる」と聞いておりました。

 共通の趣味があり気も合う友人が異性だったりしますと、色眼鏡で見られることもありますし、私も似たようなことを言われることがございます。

 根も葉もない事を言われるのは、不本意なことでしょう。

 が、お二人のご様子を見ていると、火のない所に煙は立たぬとのではと、ぶっちゃけ思うのです。

 ちょっとした視線の動きや距離感、何とはなしに並んで歩いてしまっているところとか。

「……あれで付き合っていない、とか」

 ふと零れた言葉を耳にしたようで、隣を歩いていたお母様が「デスヨネー」と小さな声で呟いておりました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

青春ログアウト はむちゅ @hamuchu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ