04

 仕事の合間に自分のスマホを確認したら、娘からLINEが入っていた。どうやら申し込んでいた某二次元アイドルユニットのライブに当選したらしい。

 おー、それは何よりと思って続きを確認すると、どうやら友達も当選したらしたようで「他に誘う人居なくて草」「最終手段はうちの親が参戦」と書いてあった。

 当選の確立を上げるため、同じアルバムを予約してた友達にも頼み、「当選したらお互い相手を誘う」という協定を結んで申し込んでいたのは知っていたが、まさか二人とも当選するとはねぇ……。

 最終手段に関して「了解」と返信し、帰ってから家族会議かなと思いながらスマホを閉じた。



「で? 他に誘う人は決まったん?」

 帰宅後、娘に聞いてみると、

「あーちゃんと安吾が参戦してくれるって」

 と答えが返ってきた。

 なぜ甥っ子の名前がそこに出るのだ。あーちゃんは、まぁ先方ともゲームで交流があるから想定内だが、甥っ子は想定外だ。

 ……ゲームか。あの水鉄砲の陣取り合戦のヤツ繋がりか。

「両者ともガチのお前の身内じゃねーか」

「持つべき者は幼馴染と優しい従兄殿だね」

「それで良いと言ったのか先方は。付添いもキミの親なんだぞ」

「『こっちはその二人を少しは知ってるけど、そっちはうちの身内を全く知らんでしょ』と言われたYO……」

「なんてお気遣い痛み入る回答」

「ホントダネー」

 ライブは安くないお値段なので、それも含めて本当に参戦可能なのか聞いてみると、二人ともOKだとの事で、最終手段は回避されたようだった。

 ……ちょっと残念だったのは秘密。



 私がライブのことを知ったのは、娘がアルバムを予約した時だ。

 アルバムを予約すると、ライブの先行申込みが出来るらしい。

 娘は事前にそれを知っていたようで、その為に予約をしたそうだ。そして先方も同じアルバムを購入予定だったようで、まとめて一緒に予約する代わりに、ライブの先行申込みの協定を結んだらしい。

 娘曰く「自分じゃ当たる気がしないので、あっちの幸運ラック値に期待」と言っていた。だから、二人とも当選するのは想定外だったようだ。

 誘うにも、そのアイドルユニットを知っている友達も少なく、そしてライブ代も中学生が払うにしては高額だ。

 また、もしも誘いに乗ってくれる学校の友達がいたとしても、だ。

 娘と先方の噂が、噂でなく固定された情報として(正しいかどうかは別)、学校に拡散されることは想像に難しくない。



 ライブに一緒に行く友達は男の子で、少なくとも1年間、娘と噂になっている。

 本人達は否定しているが、2年間同じクラスで同じ係をしていたり、イベント毎によく一緒に居たりするそうで、その際の様子が付き合っているように見えるとか見えないとか。

 趣味も話も合うみたいだし、親としては、学校の廊下の端から興味津々で見守りたい話題であることに間違いなく、今回のライブの話を娘から聞いた時には、内心「お前、それで(以下略)」と心で突っ込まずにはいられなかった。

 なんにせよ、気心の知れた友達と行くライブはとても楽しいだろうし、来年は受験も待っているし、全力で満喫してくればいいと母としては思うわけで。

 ライブ当日は、子ども達の邪魔にならない程度に、遠くから見守って萌えさせてもらうぜ娘よと、心で呟く親心です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る