第51話 異世界からの帰還、そして……?

 あれからのことは怒涛の日々であった。


 まず、成田の入管窓口に突然人が降ってきたと騒ぎになった。

 しかも、片方は行方不明の職員、もう片方は国際手配されているマフィアときたものだからネットで動画が拡散されたりしたらしい。


 らしいというのは、俺は入院という形で騒ぎから遠ざけられていたからだ。動画も何らかの方法で火消しをしたらしい。

 やはり上層部は俺が異世界に行っていた事情は伝わっていたので、行方不明中のことは公にされることはなく、俺は表向きは国際手配犯を追うために極秘出張しており、見事リー・リィヤンミンを捕らえたことになっていた。


 リィヤンミンは日本の警察に捕まり、これから司法の裁きを受けることになる。マフィアのボスだけあって、日本国内だけでも余罪がたくさんあるらしく、死刑或いは無期懲役と一生出られない量刑になりそうである。


 俺はしばらく“入院”した後、復職する前に智樹の家族を訪ねて、焼香をしてきた。

 智樹を殺したであろう犯人を俺が捕まえたということで大変感謝された。

 あいつは戻ってこない。しかし、犯人を捕まえたということは遺族にとっても一つの区切りになるだろう。


 両親はばあちゃんのことは言い含められていたようで、俺の話に驚くことなく淡々としていた。

 あちらで彼氏が出来たから留まるようだと告げたら、「最近、仏壇の石がいやにキラキラしているのはそのためか」と言っていたから、あの石はばあちゃんの心と何らかのリンクしているのかもしれない。

 とはいえ、異世界の様子はそれ以上はわからない。今回の送還は片道切符だから戻ることはないし、また行けるのかどうかもわからない。なんだか、あの日々は夢を見ていたような気にもなる。

 ただ、撃たれて大きくひしゃげたタブレットを見るたびにあれが現実にあったということを示していた。


 チヒロは助かったのだろうか? なんだかんだ言っても、慣れない異世界をばあちゃんと共にリードしてくれて楽しく過ごせたのは彼女のおかげだ。

 助かっているといいのだが、フロルディアで一、二を争うクラスの魔導師ブルーノの回復魔法をもってしても「あとは本人の体力と気力次第」と言っていたのがひっかかる。

 とはいえ、こちらからは確かめようがない。


 やきもきしながらも、復職の日を迎え、マコトは出勤した。

 周りは腫れ物に触るような扱いなのが居心地悪かったが仕方ない。異世界で仕事していたなんて上層部しか知らないし、極秘出張ときう表向きの理由でも十分ドン引きされる。


「せめて、病気で休職扱いにすりゃいいのに」


 ため息をつきながら番号札の機械のスイッチを入れ、始業のチャイムが鳴り響いた時、見覚えのある女性が近づいてきた。


 あれは、見間違いではなければチヒロだ。しかし、何故ここにいるかわからない。目が合って嬉しそうに小走りに近づいてきた。


「マコトー! 私、無事に治ったよ! 一言それを言いたくて会いに来ちゃった!」


 いつか出会った時と同じようなローブ、そして肩からかけている大きめのカバン、そこから見えているのは召喚石。


 待てよ、召喚石は一度異世界に行った者を強制的に引きずり戻すのではなかったか?


 その疑念は正しかったらしく、チヒロがカウンター越しに来た瞬間、召喚石が強く輝き、俺達を包み込む。


「あ、やだ! 石の発動抑えるの忘れちゃった!!」


「おい! まだドジしてるのかよ!」


 かくして、俺、小田真は復職初日に再び異世界へ召喚されてしまったのであった。


 ……まあ、またあの召喚管理局の日々も悪くは無いかもな、と異世界への空間へ飛ばされながらもぼんやりと考えていた。


 ~完~

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異世界召喚管理局~勇者が腐るほどいるので在留資格を審査します!~ 達見ゆう @tatsumi-12

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