必死に頑張れば頑張るほど、乗り越えなくてはならない壁にぶち当たるもの。
あまりの壁の高さに、迷ったり、投げ出したくもなる。
そんな時は甘えたっていいし、泣いたっていい。
側にいるのは誰ですか。
家族、恋人、それとも頼れる上司……。
本作品では、田舎から東京に出てきた主人公・千夏ちゃんが、就職した企業先であまりに辛くて塞ぎ込んでしまう。
それからアルバイトを経て、再就職するのですが……。
作者さまの構成力と文章力が非常に高く、(良い意味で)騙されましたっ!
タイトル「温かな背中」の意味を知ったとき、思わず泣いてしまいました。
とても温かく素敵な作品です。
主人公には彼氏がいた。東京生まれ、東京育ちの彼氏だった。一方主人公には北海道と言う故郷があった。彼氏は主人公に、いつも意地悪な言葉を投げかける。「故郷に帰りたい=逃げ帰る」という感覚でものを言うから、主人公は「絶対に帰ってなるものか」と意固地になっていた。
そんな中、主人公は就職活動に失敗し、ブラック企業に就職してしまう。もちろん、長続きはせず、短期で退社して体も心もボロボロだ。そんな時、故郷に帰って家族に泣きつきたいと思うが、やはり主人公は意固地になってしまう。意地悪なのに、彼氏は優しく、笑顔を向けてくる。意地悪なのに、そこがズルかった。
再び職を探すことになった主人公は、ワインの買い付けから販売までを行う会社に就職する。そこで出会ったのは、やはり意地悪だが優しい専務だった。ここから主人公の恋は急展開を迎える。
専務のことが気になり始め、ついには彼氏とケンカ。
さんざん拒否していた故郷に、帰ってしまう。
東京に戻った主人公を待っていたのは……。
ワインの知識が豊富な作品で、それが作品を濃厚にしている。
大阪に出てきた時の頃を思い出して、思わず主人公に過剰移入して懐かしくなってしまった。読み終えるまでの時間はとても短く、本当にあっという間に作品に引き込まれた。
特に、都会育ちの人以外の人に読んでほしい一作です。
是非、ご一読ください。