第5話
「んんっ……る、ルゥ……」
うみの浅瀬で身体半分は水に浸かりながら、私はルゥに襲われていた。初めてのルゥとのキスは軽く触れる程度なんてものではなく、呼吸ができなくなるくらい深いものだった。
まさか今までそんな対象なのだとは思ってもいなかった。私にとってのルゥが。ルゥにとっての私が。
私の唇は何度も何度もルゥの唇を受け入れた。抵抗しなかったわけではないけれど、圧倒的な力の差を感じていた。本気になったルゥには勝てない。でも、唇から感じるルゥからの愛は私にとって決して嫌なものではなかった。
一通り楽しんだのか、ルゥが静かに距離をとる。そして私の顔を見ると、真剣で貫くような眼差しを緩め、顔全体で笑った。
「あはは! おねえさん、まっか! かわいい」
そうなのだ。私はルゥが好きで、大事な人だった。その人から急に情熱的に求められて、嫌なわけがなかった。けれど、まさかこういう男女の営みを求められるとは思ってもなく……私の中は戸惑いでいっぱいだった。それが赤面という形で顔に出たのだ。たぶん、きっと。
「ぼくはね……」
ルゥは私の手を握り、話し始めた。
「いつかおねえさんとこどもつくりたいっておもってるよ」
子ども……!? 常識の知識として知ってはいる。けれど、男の子と深く付き合ったことのない私には未知の世界だった。子ども……生むのは女の私だろう。正直に言えば、怖い。一度だけ出産のシーンに立ち会ったことがあるけれど、あんな壮絶な思いをして子どもを生むことが果たして私にできるだろうか。
「ね、ねえ、ルゥ、それ、本気?」
恐る恐る訊くと、ルゥは真っ直ぐな目で答えた。
「ほんきだよ」
ルゥは私を抱き寄せ、耳元で囁いた。
「だからこれからぼくのすることにちょっとずつなれていってよね」
私の身体が硬直する。それに、尋常じゃなく身体が熱い。
まさかそんなことを考えているとは夢にも思わなくて、ただただ言葉を失う私に、ルゥはもう一度唇を重ねた。
<終わり>
少年と海~この世の終わりのその後~ 桜水城 @sakuramizuki
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