第6話 トマトの実

帰ってスマホをがさつに手に取った。

心とは反対に、指先はメッセージアプリをタップしていた。

新規友達のリストに

波留

という名がある。

誰が紹介したんだろ?あかりんかな?

そんなことを思いながら追加のボタンをひょいと押した。

最初はどんな挨拶しようかな?

そんなとき

"やっぱ会いたいかも。日曜会おっか。"

一瞬時が止まった。

なんでこんなときに連絡してくるんだろう。

なんでこんなときに涙が出るんだろう。

まだ好きなんだ。私が私に気づいた瞬間だった。変わりたいのに変われない自分に飽き飽きしながらまた会えるんだって安堵してる自分を殴りたかった。


チャラン♪

波留からスタンプが送られてきた。

でも目の前が霞んでどんなスタンプかわからなかった。


私の真っ赤に熟れたトマトの実が弾けてもう元には戻らなかった。

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蝶を轢く @mico724

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