東京には詳しくない田舎者ですが、今の東京の都市の中でも秋葉原の存在感は抜けてると思うんです。内需拡大のためのエネルギーがあふれてますし。今の秋葉原がある以上、日本という国は安泰だな、と言えるくらい。
ところが今作ではその秋葉原が独立します。東京からじゃないです。日本国からの「国」としての独立です。「山手線はどうなっちゃうの?」という疑問はさておき、外壁で領土を囲い、武装し、独自通貨を発行し、日本国と決別するのです。
中国と台湾の関係などを引き合いに出すまでもなく、現在でも国権を認める認めないで関係が冷え切った地域は世界中のいたるところにありますが、このアキバ国はシーランドなんかよりも立派に国家しています。世界にコンテンツを発信し、存在意義を示しています。
そんなアキバ国を解体すべくテロリストとして内部に潜入し、様々な工作活動に従事する主人公ですが、予想通りというかなんというか、しっかりアキバの文化に洗脳されます。気持ちとは裏腹に身体は求めてしまう、そんな感じでずるずると……
秋葉原が日本から独立して二年……
そう、秋葉原が独立したんですよ!オタクのオタクによるオタクの為の国、その名もアキバ国。
もちろん日本政府がそんな事認めるはずがありません。アキバ奪還のために秘密裏に送り込まれた自衛隊員、アキバ国内での名前はキャッスル。彼はそこで表向きはオタクとして生きながら、裏では色々奪還のための行動を起こしています。
しかし一度オタクになってしまったら色々と引きずられてしまうもの。かつて大好きだった特撮ヒーローに想いを馳せるなど、このままアキバに取り込まれるんじゃないかとおかしなところでハラハラしました。
ですがちゃんと本来の使命も忘れず、時には仲間と協力して少々過激な行動も……
果たしてアキバを無事日本に戻すことは出来るのでしょうか?終盤に語られた、そもそもアキバが独立した理由を聞いた時は、何だか少々切ない気持ちにもなりました。
オタクの街からオタクの国へ。秋葉原が日本から独立を宣言すると言う突拍子もない世界観の今作。もちろん日本側はそれを良しとするはずもなく、秋葉原を日本に取り戻すため、密かにアキバの国に自衛隊員を派遣します。
そこで自衛隊員が見た物は、オタク文化を国を挙げて推奨する、オタクにとってとっても住みやすい国でした。
テレビでは四六時中アニメやゆるキャラプロレスなるものが放送され、徐々にオタク文化に染まっていく自衛隊員。だけど本来の使命を忘れてはいません。徐々に馴染んで来たアキバですが、それでも日本に取り戻そうと、テロに近い行動も行っていきます。シリアスな展開のはずなのですが、要所要所にギャグが練り込まれていて笑えました。
だけど読み終わって思ったのは、そもそもなぜアキバは独立したかと言う事。
そこにはオタクたちの切実な想いがあって、少しウルっと来てしまいました。魔法のiランドコンテスト、オタク部門参加の今作ですが、『切ない』要素も入っちゃってますよ。
笑えて、時には感動する、オタクの街の独立物語です。