採用試験⑩

 ――リアム・ムーア



 私は天才だ。

 自称などではなく正真正銘の天才である。

 ただ、誰にも認められていないだけだ。


 この世界はすでに一度滅んだあと復興した世界。

 かつて世界は今よりもずっと栄え、技術力も今とは雲泥の差があった。

 そんな世界を取り戻そうという私の夢を人々は笑う。


 世界の終焉。

 物語などではこれまでいくつも語られてきた。

 しかし、そんな物語のようなこととが過去、この世界では起こったのだ。


 もちろんもある。

 世界の心理を紐解く

 私は長い歳月をかけて見つけたのだ。


 しかし、あまりにも難解であるがためにすべての解読には至っていない。

 それに私が見つけたのはアカシックレコードの一部分にすぎない。

 世界の各地に今も眠っているそれらをすべてを紐解き、世界の理を知ることが私の夢。


 その夢をかなえるために必要なもの。

 私の夢を現実に変えてくれる存在。

 それこそがジャンク・ブティコだ。


 まぁ、就職できなければ意味はないのだが……

 頑張るしかないだろうな。


 対策などとることはできないのだから、素の自分で挑むほかないだろう。

 どうせなら研究成果という手土産を用意していこう。



 ――黒羽夜一



 なんというか……すごい恰好の人が来たな。

 変人と呼ばれる類の人たちとはこれまでたくさん? 出会ってきたけれど、これは……どこか懐かしさを覚えるヤバさだ。


 古の時代。

 かつてそれらは日本の街を跋扈ばっこしていた――らしい。

 その名はガングロ。

 すでに絶滅したとも言われていたが、まさか異世界で生き延びていたとは……


 って、そんなことあるわけないやん!?

 ふぅ、慣れないノリツッコミは疲れるな。


 よくよく観察してみるとガングロだけでなくほかの部分もいろんな意味でヤバい!

 まずは服装。

 うん。表現するのが難しい。

 一言でいえば変。

 異世界特有の服装とかならまだいいのだが、明らかに現代風の装いだ。

 俗に言うゴスロリファッションである。

 それだけならばいいのだが、なぜか短い丈から覗くブルマ!? そして髪は盛々である。

 いろんなスタイル? が混在していて目がチカチカしてしまう。

 爪なんかもデコっている。


 そんなわけのわからない見た目に反して、会話の内容はいたって真面目で、興味のそそられるものもたくさんあった。


 彼女は考古学の研究の過程で、太古に滅んだ文明の存在に気づき、その文明の再興を目標としているとのことだ。

 にわかには信じられない話だが、嘘を言っている様子でもない。


 事実として彼女の服装も現代日本と類似点を感じる異世界においてはまさしく異端とも呼べるものだ。


 そして彼女のあくなき探求心が生んだ副産物。

 ワープ装置の実用化。

 彼女自身は遺跡と自宅の行き来にしか使っていなかったようだが、世紀の大発明である。


 この発明一つで一生食い扶持には困らないだろう。

 しかし彼女はその技術を公表することもなく、自身の知識欲を満たすための道具としての価値しか見出してはいなかった。


 ジャンク・ブティコに欲しい技術だ。

 ぜひとも引き入れたい。

 それに夢を語るその姿には嘘がないように思えた。


 それはセルシアも同じようで静かに頷いていた。


 高い技術力に現行世界とは違う理から得た知識。

 それらは今は実をつけていなくとも、いずれ蒔いた種がおいしい実をつけ、おいしく食すことができるだろう。


 少なくともワープ装置は今すぐにでもおいしい身をつけてくれそうだ。


 大切断を必殺技に持つ仮面ライダーと同じ名の大手企業のような事業の展開も現実味を帯びてくる。


 ぐへへ。


 笑いが止まりませんなぁ。


 また一人、合格者が決まった瞬間であった。

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異世界経済革命~ジャンク・ブティコの経営改革~ 小暮悠斗 @romance

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