好きな人と一緒に帰る、というシーンは誰もが経験したりしなかったりする青春の1ページなわけですが、本作はそれを「たぬき坂」という坂道をポイントにしてのぼったりくだったりしつつ、時にはぜぇはぁ言いながら、時には颯爽と、一生懸命にペダルを漕ぐように展開していきます。
キャラクターたちはそれぞれに魅力があって、軽快な会話がとても楽しかったです。
お節介な女友達、一途なクラスメイト、人遣いの荒い姉、むっつりオタクな友人、くそゲスな先輩などなど。
わりと受け身でダサめな思考回路の主人公ですが、そうしたキャラクター達に背中を押されたり腹を殴られたり魅惑的に迫られたり小悪魔的に振り回されたり自転車で爆走させられたり、いろんなのぼりくだりを経て、やがて自分の気持ちに行き着きます。
そうしてペダルを漕ぐ彼を応援しているうちに、物語は帰り道にて結末を迎えました。
青春真っ只中の方も、あの頃の自分を思い出すわ、という方も、青春なんかうんこだわ、という方も、ぜひ彼と一緒にぜぇはぁしたのちに、坂の上からの景色を見てもらいたいと思います。
友達に戻った幼馴染の彼女。
未練を引きずる主人公。
期せずしてはじめることになった自転車通学。それまでバスで通りすぎるだけだったその道に見えてきたものは――。
青春です。これぞ青春。まさしく青春。ほんとに青春……! いや、青春とかじつはよくわからないんですけどね。経験ないので。←
でも、青春なんです……!
……何回『青春』ていってるんでしょうね。いやもう、ほんと、すいませんなんだけど、青春としかいえない……!
通学路。バス停。自転車。苦くて切なくて、とっても甘い帰り道。
青春が青春で青春です。
現役の学生さんも、遠く過ぎさってしまった大人のみなさんも、ぜひご覧ください。