5.あのジョニーはもう居ない

 台風一過の空は晴れやかで、秋らしい澄んだ青空を見せていた。

 かつて東京と呼ばれた都市の一角。半壊したマンションの廊下で薄月はヴィオラケースを持ち直し、ポケットの中に鍵があることを確かめる。

 繰り返し叩きつけられたサメタイフーンの被害からなんとか生き延びた部屋の扉の前で薄月は表札の部屋番号を確かめ、慎重に鍵を差し込んで回す。あるべきものがあるべきところに移ったことを告げる音とともにシリンダーが回った。開けた扉の向こうにあるのは、天井が吹き飛び、壁が吹き飛び、床すらも殆どが吹き飛んだ崖っぷち。打ち捨てられた街が広がる崖っぷちを前に、薄月は晴れやかな表情でつぶやいた。

「ただいま」

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魔法少女対シャークタイフーン ターレットファイター @BoultonpaulP92

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