落語で語る昔の話 四 祝男色大鑑現代語訳出版
泊瀬光延(はつせ こうえん)
落語で語る昔の話 祝男色大鑑現代語訳出版
男色大鏡のコミカライズに続いて初めての現代語訳の出版(平成30年11月頃)を祝して
現代語訳が文学通信社から発行されます。研究に携わってきた文学者のグループの努力の結果です。ここにお祝いの掌編を捧げます。
http://bungaku-report.com/blog/2018/07/post-235.html
*ご隠居と熊の会話が段落ごとに交代して記されてます。
てーへんだっ!ご隠居!
なんだ熊。火事でもあったのかい。
い・・・今「だんじきたいかん」ってえろ本が評判だって!女の子がよ、きゃーきゃー言いながら読んでるって!
・・・何云ってんだよ、こいつは。そりゃ「なんしょくおおかがみ」って読むんだ!このすっとこどっこいが!
な・・・なんだそりゃ。大岡越前様が難色を示したあ!・・・ぐれえのえろほんだろ!
いい加減なこと言いやがって!こりゃ純粋な恋と契の物語じゃ!
純粋な・・・って?男同士の恋かい!俺は興味ねえぜ、ご隠居!
おめえが興味なくたってどうでも良いんじゃ!分かる人が分かりゃな!西鶴は男女の色恋よりももっと鮮烈な「契」っちゅう恋を若道(じゃくどう)に認めたんじゃ・・色事もあるが生死を掛けた話もある。男同士ってことでそれが浮き彫りになる・・・(遠い目
へえーっ!それを読んで喜ぶ物好きがいるんかい!
・・・誰でも興味があるわけじゃあるめえよ。だがなこの世にはそういう恋に敏感な腐女子様という存在があるんだ。腐男子も少々・・
あれ!ご隠居!それ何だ!
・・・こ・・・これは薄くて厚い大鏡の現代語訳・・あっ!熊!持っていくんじゃねえ!
へっへっへ・・ご隠居も隅におけねえな!こんな評判の本を隠し持っているなんぞよ!だがな野郎同士の恋なんて気持ちわりいんじゃねえか・・・どれどれ・・・・・へっ!殿の前で腕斬られてそれでも念者を想って!・・・ええーっ!こ、こんな若衆、おれっちも恋の字に欲しいぜ!
ご隠居お!
熊!また来やがったな!さっきの本、けえしてもらおうか!・・・ほう、もう読んだのかい!(こいつ普段は艶本しか読まねえが)・・・何?どこ行きゃそんな若衆に会えるかって?・・・江戸なら湯島天神界隈かな?歌舞伎役者にはおめえなんか縁がねえしな。京都は宮川筋ってとこもある・・・
おう!京都かい!あの義経と弁慶が契を結んだって五条大橋の向うだな!ちょうど京都に行く飛脚の仕事があるんでい!よし!じゃ「堀」川筋だ!
ああ・・・すっ飛んで行っちまった・・・まったく気の短え奴だぜ。義経と弁慶の契なんぞどこの本を読んだんだい?(注2)・・・あんな単純な野郎に知性たっぷりの陰間が靡く分けもねえな・・・宮川を堀川(注3)とまちげえやがっただけに『掘られて』帰(けえ)って来るんじゃねえか?
ちょっと苦しいでしたがお後が宜しいようで♪
注1)宮川筋 京都で最も早く陰間茶屋が出来たと言われている。
宮川筋を舞台にした小説 https://ncode.syosetu.com/n2596c/
注2)義経と弁慶の契についての本(十八歳以下ご禁制の本です) https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=1782310
注3)堀川通りは京都の主要な南北を走る通り。対して宮川筋は地名としてはあまり知られていない。ということで熊は取り違えたようで(汗・・・テケテンテン♪
注4)熊とご隠居の生きた時代は元禄の頃ですが一部現代語を使ってます。
落語で語る昔の話 四 祝男色大鑑現代語訳出版 泊瀬光延(はつせ こうえん) @hatsusekouen
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます