各話の出典と補足説明(7話〜15話)

7話


損傷して脚が片方降りないハリケーンからパイロットが脱出するシーンは、Crook DFCの10月初旬の記述から。同僚のポーランド人パイロットNoviのスピットファイアの脚が片方降りないため5,000ftまで上昇して背面飛行にして脱出したシーンを参考にしています。


パイロットを失った気体が背面からくるっと正常状態に戻って墜落するのは、紙飛行機を作って飛ばして飛行機の飛び方をいろいろ観察したことを元にして書いてます。


ポーランド人パイロットはDonahue DFCとCrook DFCのいずれの手記にも登場していて、いずれも彼らのドイツへの激しい憎悪が描かれています。当然カミルのキャラに反映させています。


英国人はパイロットをよく'boys'と表現します。とりあえず「小僧たち」と訳してみました。あと飛行機を'machine'と書いてるのがかっこいいです。'German machines'とか。飛行機を表すスラングで'kite'というのもありますがあまり使われていません。


8月12日のドイツ軍の大規模な攻撃はCrook DFCの同日の記述を参考にしています。200機以上というのは他の資料でも確認できます。氏のこの日の行動が敵の真ん中を高速で降下して突っ切るというもので、7話のクライマックスはこのシーンを拝借しています。


Donahue DFCは別の敵と交戦しますが、20mm機関砲の命中弾により操縦不能になり脱出し、火傷により入院し回復に6週間かかっています。本人によると攻撃したのはHe113とのことですが、当然これはドイツ宣伝省による架空の機体なので、Bf109の誤認と思われます。F型かもと思いましたが時期的にE型でしょう。


8話


Crook DFCの記述や他の資料から、8月14日以降基地を爆撃機が攻撃するようになったので、そのシーンを書いています。この回は細部はほとんど想像です。


カミル氏の回想はCrook DFCの8月15日の分に、ポーランド人のNoviとOstiのことが書かれているので、それを参考にしています。フランスでMS406に乗っていたこと、カーチスはフランス人用で、しかも十分使われていないことなど。


ポーランドでの戦闘、ルーマニアへの亡命、ルーマニアからフランスへ、フランスから英国への移動シーンは資料を見ながら想像を膨らませて書いてます。資料は主にwikipediaのポーランド侵攻の記事ですが、この資料だけでも、それまでもっていた「ドイツの機甲部隊に騎馬兵で攻撃してあっさり負けた」という認識がまったく妥当でないことが分かりました。


9話


ドイツ兵の墓に各キャラが手を合わせるシーンは絶対に入れたいと思い、展開をあれこれ考えました。


オレンジのユリの花は8月なのでノカンゾウをイメージしていましたが、この花はアジアの花だそうで、英国の野草にはなさそうです。畑の脇に園芸種があってもいいのでそのままとしました。


小学校のときに実家の近くで三式戦闘機の残骸を水田から掘り起こす作業を見たことがあり(作業は自衛隊の施設部隊が実施)、そのとき見た光景などを思い出して書いています。


“We will turn your pots and pans into Spitfires and Hurricanes”という字句は下記サイトから。


https://www.history.com/this-day-in-history/the-battle-of-britain-begins


10話


成層圏の戦いを書いてみたいと思い考えました。スピットファイアMk.Iの上昇限度は31,000ftだそうですので、そこからいろいろ想像して書きました。


すみません。窓に霜がつくのは想像です。


足元が冷えて頭が暑いのはPaul McDonald : "Winged Warriors"から。ジェット機の話ですが。


スピットファイアの高空の飛行はLane C.Oが書いていたはずですが、当該記事がまだ見つかっていません。


Bf109との空中戦シーンは想像で書いてます。翼面荷重からスピットならハイスピードヨーヨー、Bf109はロースピードヨーヨーかな、などと考えつつ。


何かの写真でBOB時の飛行機雲がのたうった空を見たのでオチをそれにしました。


11話


カミル氏は役割として戦死させざるを得ないキャラとなっていたため、そのシーンをどうするか考えた結果がこれです。


Crook DFCの9月27日の記述にスピットファイアがBf110と衝突するシーンがあり、「これしかない」と思い選定しました。


それ以外のシーンは想像です。


キャラを死なせるのは書いていて予想外に自分へのダメージが大きかったです。


12話


学校が基地への応援の手紙を募集する、という筋書きで、では夏休みがいつ終わるかを調べ、英国は9月から新学年新学期と分かり、「まだ8月の分しか書いてない、これは行ける!」となって、このとき結末が何月何日か決まりました。


葬儀のシーンは想像に想像を重ねて書いています。時期的にも人物的にも盛大な葬儀はなさそうと思いつつ。


13話


払い下げの複葉機で旅するパイロットは、特に資料を参照せず今までの知識で作ってます。書いていてノーマンが空軍を志願した理由が薄いな、と思いほぼ即興で追加しました。


オーストラリアワインのブドウの産地を調べてアデレード近郊と知り、アニメの『南の虹のルーシー』を思い出しながら書いています。


ブリスベン近郊の空軍基地はうちの子供が3ヶ月のホームステイに行ったとき見学してきたので、それを参考にしつつ。とはいえ、1940年にあったのか。そもそも入隊の記述はこれでいいのか、という課題がまだあります。


14話


新学期が9月1日からと分かり(登校は9月2日の月曜日)、クライマックスは7日土曜日のロンドン空襲にしました。


ただ、今まで読んだ3冊はこの日のロンドン空襲の迎撃に参加していないため、ほとんどを想像で書いてます。


なぜかエドワード・ビショップ:『栄光のバトル・オブ・ブリテン』という本がネットで読めるので参考にしました。


15話


教会の日曜礼拝は『大草原の小さな家』ぐらいでしか知らないのですが、空襲の翌日なら皆集まるだろうと思い書いてみました。


残念ながら牧師さんの説話を具体的に書くことは私には無理でした。


教会自体の位置づけは日本だと氏神様を祀る集落の神社に該当するかな、というような考えで書いています。もちろん神の概念や死生観が日本の神道と違うはずなので、その違いは意識する必要がありますが。


そんなこんなで、どうにか1本の話が完結しました。


皆さんありがとうございます。

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スピットファイア−四人の翼− 春沢P @glemaker

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