第5話 薫は荒廃した世界を歩く
空腹を満たした少女は自分の目覚めた3階建ての廃墟から一歩外に出た。
少女のヒールがアスファルトを踏みしめる。
せわしく行き交う車の音が、楽しくはしゃぐ子供達の声が、犬猫の鳴き声、台所から聴こえるノイズ混じりのラジオの音、まな板を叩く包丁の音が、ブロック塀越しに聴こえるテレビの音が
人々が形成する社会という喧騒はそこには無かった。
緩やかな風が草木をさわる音だけが聴こえる。
周辺の建物が朽ちている。窓ガラスは割れ、屋根瓦は崩れ、道路のアスファルトがひび割れてその隙間から雑草が生えている。路上に停められた車のタイヤはパンクし、金属のボディは錆び付いている。
まるでもう何年も人が住まないゴーストシティの様に見えた。
夕日に照らされた路地を歩く。
「橋に向かおう。」
廃墟の窓から見た都市部は橋を越えた先にある。まずは橋に向かうため川沿いの土手を登った。かなりの川幅をもち揺ったりと水は流れる。何処からかピアノの旋律が聴こえる。虚空の中に吸い込まれる音色は物悲しい。土手を歩き続けるとやがて巨大な橋が見えてきた。薫は橋を渡るため土手を降りる。人の気配は皆無であった。やはりここは異世界なのだという現実は変えられないのだ。
片側
四車線ある橋の歩道に銅像が置かれていた。
【未完】
黄昏廃墟の少女 東京廃墟 @thaikyo
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